胡坐


不意に視線が絡んだ。それが合図だと決め事をしたことはなかったけれど、胡坐を組んだ膝の上で一松の指先が私を呼んだ。猫の機嫌をとるようなまろやかで胸の奥をくすぐる誘惑にまるで糸を引かれたマリオネットのように引き寄せられる。

「…ねえ」
「うん」
「こっち」

歩み寄って、足先で彼の太ももを擽りながら跨げば簡単に腕のなかに捕まった。ぎゅうと、私のお腹に顔を押しつける。それから服をかき分けるように唇でまさぐって、服の端をみつけると私を抱きとめる手のひらが柔く下へと促してくる。上擦るため息を押し殺して腰をさげていけば、それに合わせてゆっくりと一松の鼻筋が服の裾を押し上げる。

「んん、いちま、」

焦れそうなほどじっくりと、あらわになる肌を唇で食み、舌を這わせる。背筋を撫で上げられた先で下着の金具が外されると、いよいよ腰が震えてくずおれそうな体を一松にあずけた。隙間なくぴったりと。触れたところから電気が走る。見下ろした彼は、たくしあげた服にほとんど顔を埋めている。

背筋をなぞって肩まで撫で上げ下着の肩紐に指をかけ、そこで一松は熱をかみ殺すような深い息を吐いた。肌を這っていた刺激は途絶え、身動ぐ私にきゅ、と目を細め下側から胸の膨らみに唇を押しあてる。

「…ハル」

これでお利口に待てができているつもりなのだ。
ここまで熱を与えておいて、最後の一押しを私に委ねる。きっと拒めば泣きそうな顔で我慢してくれる。けれどその眼差しが期待に満ちていてつい、まるで私がはじめから望んでいたように受け入れていく。それを、許してしまう。

堰を切ったように求めてハル、と呼ぶ一松が本当にずるい。私はいつだって彼の指先にまんまとくすぐられて膝のうえに居座ることになる。


今日も気まぐれなようで従順な彼は特等席をあけて待っている。




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