玉響さまより拝借






「じぃー………」

「……………。」


(な、何なんだこの視線は!?すっげえ…食べにくい…!!)




俺は同僚の市丸に誘われて、昼食を食べるべく食堂に来ている。

午前の合同演習が長引き、昼を少しだけすぎたこともあって、食堂内は結構空いている。
窓側の席には、心地よい日が差していて気持ち良さそうだ。


俺たちはその窓際のうちの一つのテーブルを陣取り、食事をしていた。
(ちなみに俺は親子丼、市丸はきつねうどんだ。)


「ん、うまい」


そうやって俺はどんどん箸を口に運んでいたのだが、市丸は中々手を付ける気配がない。
頬杖をついてこちらをじっと眺めているのだ。


「市丸、食わねえのか?伸びちまうぞ」

「…ええよ食べても。ボクお腹いっぱいや」

「なんだよ、なら頼むなよ」


少しだけ会話が途切れる。俺はもくもくと器の中身を減らしていくが、市丸の視線が気になって仕方ない…。


俺、人に見られながら食べるの苦手だ。


「……おい市丸?あんま見んなよ、食べにくいだろ」

「日番谷はんの唇、柔らかそうやなぁ………なんやキスしたなってきた」

「え?」


俺がまた一口食べようと箸を動かしたとき、市丸が頬杖をついたままにんまりして、とんでもない事を口走った。


「は…?今なんて?」


聞き慣れない単語に戸惑いつつ、もう一度聞き返してみる。もちろん市丸はこちらを見つめたまま。


「せやからー、ちょっと試しにキスしてええ?」

「なッ!?」

「なァええ?」

「……良いわけねえだろがッ!!」


俺は叫んだ勢いでバンと立ち上がり、そそくさと食べ終わった食器を下げて、逃げるようにその場を立ち去った。

(な、何なんだよアイツ…!男にキスしたいとか、バッカじゃねえのっ!)

自然と足は早足になり、顔中は燃えるように熱かった。







「かわええなぁ…」



食堂に一人取り残された市丸は。
他の死神たちの視線を浴びながら、満足そうにすっかり冷めきっているきつねうどんを啜っていたそうな…。









+++End+++




「ちょっと試しにキスしていい?」
「良いわけねえだろ!」
台詞がお題です。








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