結局は甘いんだ






「とうしろー!」

とたとたとた…


長い廊下をギンがおぼつかない足取りで、でも一生懸命こっちに向かって走ってくるから何事かと思った。


(あ、危ねえ、転ぶ)


そう思ったときにはギンは自分の反対の足に躓いて、ばたんと綺麗に伸びたまま転んでしまった。

「あたっ!」

「おい大丈夫か!?」

思わず駆け寄って抱き起こすと、『あは、こけてもうたー』と可愛らしい笑顔で言ってのけるギンのおでこは赤くて。

「馬鹿!なんでこける時手ぇつかないんだよっ」

「やって柿さんつぶれてまうやん」

「柿?」

そう言うギンの手には、その手には少し大きいかもしれない、だいだい色のツヤツヤした実が握られていた。

「なぁとうしろう!これで干し柿つくってや!」

「は?干し柿?」

「そうやで!いまあまーい干し柿がたべたい気分やねん」

「まぁ作るのは別にいいけど……。今から作ったとして、今日食べれるわけじゃねぇんだぞ?お前わかってんのか、それ」

「え!?」


キラキラ期待のこもる目で見つめられて、困ってそう告げるとすごく驚いたようにギンの目は見開かれた。

(こいつ、干し柿好きなくせにそんなことも知らねえのか)

いかにも子供らしくて可愛いななんて思っていたら、ギンは見るからに落胆したようにその場にしゃがみ込んで、いじけているのか持っていた柿を床に転がし始めた。

「むー。せっかくへいにのぼって取ってきたんにいみないやん」

「仕方ねえだろ。……つか!塀ってお前、それ人様んちの柿じゃねえだろうな!」

「しらんもん。なまえかいてへんほうが悪いんや」

「ばっかお前!すぐそれ返してこい!泥棒だぞ」

「えーいやや〜!これもうボクの柿さんやもん」


ぷくーっと頬を膨らませて怒るギンについつい可愛いなんて思ってしまいそうになるが、ここは心を鬼にして叱らねえと!


「………仕方ねえなぁ。あとで干し柿買ってやるから、とりあえずそれは返してこい」

「え、ほんま!?干し柿こうてくれるん!?」

「あぁ…」


心を鬼にして叱るはずが、やっぱり俺はギンに甘いみたいで、干し柿を買ってやる約束なんかしてしまっていた。

でもそう言ったとたん、一目で分かるほどにぱぁぁあっと明るくなったあいつの表情に、これまた甘いことにまぁいいかと思えてしまった。


「なぁなぁ、ボクめっちゃあまい干し柿やないといややで!」

「はいはい。わかったからほら行くぞ。その柿どこで取ってきたんだ」

「あっちやでー!」


俄然元気が出てきたようで、ギンは俺の手を引いてどんどん先へと進んでいく。

(子供ってほんと現金だよな…)

って、必死についていきながら苦笑を漏らした。



End
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懲りずにちびギンやってしまいました(笑)
ちびギンかわいいいいいいい!!!大好きだ!!

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