外国語






「遅えな、草冠のやつ…」


俺は駅前の公園で待ちぼうけを食らっていた。
今日は、どうしても観たい映画があるからついて来てくれ…と言う草冠に付き合って、隣り町の映画館へ行く予定だ。

約束の時間の五分前に待ち合わせ場所に到着し、それから更に十分待っているのだが一向に草冠が現れる気配はない。
携帯電話を見てみるも、遅れるという内容のメールもなければ着信もない。
一瞬、何か事故にでも巻き込まれたんじゃ…という不安が過ぎったが、いやいやあいつに限ってそれはないだろうとあのタフそうな笑顔を思い出し、フッと目を細めた。

待っている間があまりにも暇なので、俺は道行く人を観察して時間を過ごすことにした。
忙しそうに行き交う人々の中、キョロキョロと周りを見回し、同じところを行ったり来たりしている外国人が目に入る。
道に迷ってんのかな…とは思ったが、英語はからっきしダメだったので、うっかり話しかけられてしまわぬように目を逸らした。

いや、逸らそうとした。

逸らすよりも早くバッチリ合ってしまった視線に、げ…と眉を寄せるも、相手はにこやかに明らかに自分の方目掛けて歩いてくる。

(おいおい…勘弁してくれよ…)


「Hello. Excuse me? But could you tell me the way to the hospital?」

「あー…その…パードゥン?」

「Could you tell me how to get to the hospital?」

(ちょっと誰か、助けて…そんなにこやかに言われてもわかんねえっつーの…)


なんとなく言っていることは分かるのだが、何せ語彙力がないものだから、道案内など出来るはずもない。
どうしようどうしようと半ばパニックになっていたところ、後ろから肩を叩かれた。

やっと来てくれたか草冠…!とほっと安堵して振り向けば、それはよく見知った友人の姿ではなく、大学生くらいのスラッとした知らない男だった。

男は安心しろとでも言うように俺に笑いかけ、それから目の前の外国人に向き合った。

「What's up?」

「Oh,I want to know the way to the hospital.Do you know?」

「Yes.Go straight and....」

(す、げえ……)

目の前で繰り広げられる生の英会話に、俺はひたすら感心せずにはいられなかった。
完璧な発音で楽しげに会話を終え、「グッバイ」と別れた二人は、俺には全く別世界の人間だった。
急激に、先ほどあんなに動揺しておろおろしてしまった自分が恥ずかしく感じられた。

外人が去った後も緊張して縮こまっている俺を見て、何を思ったのか、英語ペラペラの男は笑いながら頭を撫でてきた。

「あは、怖かったやろ?あの人厳つい顔しとったもんなァ」

「あ、いや…助けてくれて、ありがとう…ございます」

「いややなァ、助けたやなんて大袈裟な。キミももうちょっと習ったら、こんくらい喋れるようなるで」

「え、あの…」

薄い唇から発せられる言葉が訛っていて、英語を話している時とはあまりにもイメージが違ったので一瞬ドキッとしてしまった。
滑らかに流れるように発音される言葉が自分と同じ国のものだなんて考えられなくて、美しく耳に心地よいそれに少しだけ聞き惚れてしまった。


「ほな、ボク行かなアカンわ。キミの連れもきたみたいやしな?」

「…あ、草冠!」


そう言われて初めて向こうの方から手を振りながら走ってくる存在に気がついた。

「おい草冠!遅いじゃねえか!」

「ごめん日番谷、俺としたことが寝坊して…って、顔赤いけどどうかした?」

「べ、別に何も……あッ!」

一瞬、草冠に気をとられていて男の存在を忘れていた。
ハッとして振り返るとそこにはもう先ほどの男の姿はなく、遠くの方を目で探してもいそうになかった。


「どうしたんだ日番谷?」

「いや、何でもねぇ…」


今日初めて会った相手にまた会いたいと思っているなんて、俺、おかしいな…と思いつつ草冠と二人、駅まで足を向けた。




End
―――――――――

まず、ギンヒツだと言い張らせてください。
草冠はただのお友達。
ていうか草冠って冬獅郎呼びだっけ…?わかんない。初めて書いた。

日番谷くんは中学2年生くらい。
天才児じゃないけど…子供っぽいけど…あれは日番谷くんです。広い目で見てクダサイ。

英語喋れる人かっこいいね!って思ったことがこの話の始まり。
更新しようそうしよう!と思ってちゃちゃっと書いたから、もちろん英語なんて調べてないよ。適当だよ。

だから決して真面目に読まないで下さい…恥ずかしいから…

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