何年か前の誕生日。
世界で一番大好きなあいつは、キラキラと輝くプレゼントをくれました。


* * * *


寒い寒い夜のことでした。師走の風はいつになく冷たく、突き刺すように全ての物を冷やしていました。一歩部屋から外に出ると、吐き出す息は真っ白に色を変えるほどです。
暖かい室内と外界を隔てるガラスの窓は、その温度差に耐えきれないように、しとしとと涙を流していました。


外はこんなに冷たいけれど、俺の心がこんなに温かいのはどうしてでしょう。
ほかほかと心が内側から溶けだして、自然に笑みが零れてしまうほどに温かいのです。満ち足りて、とても幸せな気分です。


たぶん。
それはきっと。


俺の隣りでにこにこ笑ってくれている、あいつのおかげでしょう。
おめでとうを言ってくれて、大きな両の腕で包んでくれて、優しいキスを降らせてくれる。そして大好きな声で、あいしてるって、ささやいてくれました。

なかなか言葉には出せないけれど、そんなあいつが、本当に大好きです。


あいつははにかむように笑いながら、光を受けてキラキラと輝くプレゼントをくれました。


結婚しよう。


魔法の言葉とともに、俺にプレゼントを差し出してきたのです。一瞬心臓が止まるかと思いました。
その後全身に広がった魔法は、俺の心をドキドキとときめかせました。
頬に赤みが集まってきます。

そして俺はまるでその言葉しか知らないかのように、あいつの名前を何度も何度も呼んで、こくこくと頷きました。
するとあいつは嬉しそうに俺の左手をとって、すっと薬指にリングをはめてくれました。

俺はそのプレゼントが陣取る左の薬指を目の前にかざして、これ以上ないほどの幸福感に浸りました。
きっとからかわれるんやろなぁってくすぐったそうな表情で笑う、あいつが愛しくて幸せすぎて、知らず知らずのうちに、頬には温かな涙が一筋流れました。

あいつは一瞬驚いたように目を見開きましたが、その後すぐに柔らかくふんわりと抱き締めてくれました。鼻腔をくすぐるにおいは、やっぱり俺の大好きなものでした。



結婚なんて自分には無縁だと思っていたから、これからあいつと二人、家族になると考えてもいまいち実感は湧きません。しかしあいつが俺と結婚したいと思ってくれた事実だけは、心が苦しいくらいに伝わってきました。

こんなに愛されて、俺は幸せです。


世界で一番大好きやでって自慢げに言うあいつに、普段なら絶対告げられない一言を言うことができました。


あいしてる


この五文字が素直に口に出せたことに、とても驚きました。不思議なことに、今日は、自分からキスをしてあげてもいいかなぁとまで思えます。




だいすきだよ、市丸




12月20日の寒い一日に、温かい記念日が一つ増えました。



End
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