追試




「うわぁ…。どうしよう。」

数学も国語も物理もよかった。
ただ……。

「社会が追試……。」
社会で珍しく壊滅的な点をとってしまった。
まぁ、全部の科目を平均すれば順位は真ん中になると思うんだけど。

「ね、ね、白石君。一緒に追試受けない?」
「残念やけど…。」

そう言って白石君が出してきたのは満点のテスト。
妙に顔もドヤしてるように見えるし。

「追試はいつなん?」
「明日…。」
「ほな、満点とれるように俺が手とり足とり教えたるで。」

白石君の授業が始まりました。




「はい、生活のお金の中で食品が占める割合のことを?」
「エンジェル係数!」
「違うで。エンゲル係数や。」

私はどうやらいろいろと間違って覚えていたみたいだ。
しかしエンゲル係数をエンジェル計数と間違って覚えていたなんて悲惨すぎる。
まぁ、エンジェル係数というのもあるということも知ったのだが。

「休憩せーへん?」
「んー。するする!」
気付けば2時間程たっていて、頭が限界を訴えていた。

「あのさ。」
「なんや?」
私が白石君の隣に行って声をかけると、白石君は笑顔で聞き返してくれる。

「もし私が無事追試を切り抜けられたら、さ…」
いっぺんに言うのがなんとなく嫌で、私はゆっくりと言う。
白石君は頷きながら聞いてくれた。

「遊園地に連れてってくれない?」
あえてお願いしたのは白石君の気持ちが気になったから。
今も私のことを好きでいてくれてるのか。

それを確かめるため。

「……。」
白石君はハァと溜め息をついた。
断られるのかも。

私は多分不安げに白石君を見ていたんだと思う。

「いい、ってか大歓迎に決まってるやん!」
白石君はニパっと笑って私を引き寄せて抱き締めた。
私は静かに目を閉じた。




「よっし!いけたかも!」
追試が終わって私は飛びはねました。
教室には私一人だけ。
追試はいい感じ!

さすが白石君。エンゲル係数出たしね。

「なぁ、なまえ。」
不意に呼びとめられて、後ろを振り向くと謙也だった。
「なに?」

ただ今日はいつものヘタレって感じより真剣な顔の謙也で少し怖い。

「なぁ。白石とは付き合っとるん?」
気まずかったけど、私が首を横にふる理由はなかった。
「うん。付き合ってる。」
謙也は一瞬悲しそうな顔をした後、また真剣な顔に戻る。

「なぁ、なまえ。」
「なに?」

体が謙也に引き寄せられた。
目の前の事実に目を見開く。


信じられなかった。
白石君より少し優しいぐらいに私を抱き締めていた。

「え…?」
「俺は…俺は!前からなまえが好きやったんや!」

その告白に私はただ驚くばかり。

「だって…謙也は私のことふったよ?」
「俺から告白したかったちゅー話や。」

私は首をふる。
これ以上聞いちゃいけない。
せっかく、謙也じゃなくて白石君のことを大好きになれそうなのに。
やめて。

私を狂わせないで。

「大好きなんや、なまえ。」
耳元で囁かれて頭がクラクラしてくる。
あれ。こんなシュチュエーショュン前にもあったよね?
確か、初めて白石君に告白されたとき。

「や、やめて…!」
私が謙也の腕から強引に逃れようとしたけど、強い力で離してくれなかった。

「離して!」
「嫌や。離さんわ。」
ギュっと抱き締める腕に力が入った。

「お願い…、謙也。」
涙が滲んできた目で謙也を見る。

けれど謙也は聞いてくれなくて。
グイと上を向かせられると、強引に唇を重ねられた。
視界のはじには色素の薄い髪の彼がうつっていて、私は絶望的になるのだった。



2011.12.27



 

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