忍耐




「どないしたん?さっきの授業いなかったやろ?」

教室に戻ると謙也が心配そうな顔をしてきて寄ってきた。
安心する。
謙也は私が告白する前と全く同じ態度だったから。

「ん。ちょっと気分悪くて…。」
「心配するっちゅー話や。」

謙也に嘘をついてることがひたすら申し訳ない。
でも本当のことを言って嫌われたくない。

「ん?なんか赤い痕が…ってなまえ!?」
謙也の目線が首元にいって私はすぐに手で隠す。
けれどその目線はそこから離れなくて、私は謙也を見た。

「どうしたんや?その痕?」

謙也の声が今までにないぐらい低く怖くなる。
私の首をおさえている手をつかんでひきはがす。

「あのね、これは蚊が…」
「こんな冬に蚊なんておるわけないやろ。」

言い訳をすぐに切り捨てられて、私はほぼ絶望的になる。
謙也が好きってことを忘れたい。
そう望んだのに、やっぱり大好きなのは変わらなくて。
だから嫌われてしまいそうで怖くて怖くて。

「誰につけられたんや?」
だけどここで白石君につけられたと言ってしまえば、謙也と白石君の仲に亀裂が入ってしまう。
私のせいで親友の二人がギスギスしてしまうのが嫌だから。

「………。」
私は何も言わずに謙也を見る。
「なまえ……。」

謙也は今まで見たことがないぐらい怖い顔になって私を見てくる。
私は怖くて涙がたまって目からあふれてしまう。

「謙也……。なになまえを泣かせてるんや?」
不意に冷たい声が聞こえた。
謙也とは比にならないぐらい。

「白石。」
謙也は白石君を見たあと、はっとした様な顔をして叫んだ。
「まさか…白石がなまえに痕つけたんか!?」
「そうやけど…。それより、謙也。なまえを泣かせたやろ?何か言えや。」

白石君は叫ばなかったけど、その落ち着きが怖い。
教室では皆が何事と言う様にこっちを見てくる。

「取り合えず場所変えよ?」
私はこのままだと殴りあいを始めそうな二人に言った。




あーあ。5時間目もさぼっちゃったな。
まぁ、自習だったからいいか。
そう思いながら屋上にいた。

目の前には爆発寸前の核爆弾みたいなのが二人。

「まず説明しろや。なんで白石がなまえに痕つけたん?」
「俺、彼氏やから。」

白石君は悪びれずに言った。
謙也はそんな白石君の態度にイライラしてるみたいだった。

「ってか、白石がなまえの彼氏とか聞いてないんやけど。」
昨日なまえは俺に告ってきた…、と言いかけた謙也を遮って白石君は言う。

「謙也がなまえのことふった後に


彼氏にさせてもらったんや。」

驚いた。
あの白石君のことだから、「彼氏になったんや」とか「彼氏になってやったんや」とか言ってくると思ったら、
へりくだれた。

私は白石君を見ると、怖かった顔がニコリと微笑んだ。
何故だか私の顔を真っ赤になってしまって、私は慌ててうつむいた。

「彼氏やから言える。なまえを泣かした奴は許せへんのや。」

白石君は優しいのでしょうか?意地悪なのでしょうか?
図書室ではすごく意地悪だったのに、いきなり優しくなるし。
今も、すごく私のことが好きなんだなって分かって。

そんな白石君にドキドキしてる私もどこかにいます。

「っ…。俺は認めへんから!」

謙也はそう言って走って屋上から去っていってしまった。
私を一度だけ見て。

「白石君……。」
小さく呼び掛けると、白石君はこっちを見て笑ってきた。
けれどすぐハの字に眉を歪めて駆け寄ってきた。

「さっきはごめんな。調子…のりすぎた。」
「うぅん。大丈夫だよ。こっちこそ怒ってごめんね。」

白石君の悲しそうな顔に私は弱いみたいだ。
すぐに許してあげたくなる。

「あねな、あのな。なまえが俺のこと好きになってもらうまで、俺、キスも行為もせぇへん。だから、付き合ってくれへん?」

私は思わず笑ってしまう。
白石君は白石君なりに、いろいろ考えてるんだなって思ったから。

「うん。分かった。頑張って我慢してね!」
「そやな…。大変そうやけど…。」

後ろから抱き締められて、私は笑う。

「せやから、俺に惚れさせたるから覚悟しとくんやで。」
白石君はそっと耳元で囁いてきた。





ドS白石君を書く予定のはずが、けっこう変わりました(笑)
2011.12.20



 

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