好きで好きで好きなのに。

なまえが振られて喜んでる自分がいるんや。
なまえの泣き顔に欲情してしまう俺がいるんや。

そんな自分に気付くたび、俺は自分が嫌になる。



「もうさぼってしまわへん?」

ふと白石君が呟いた。
さっき白石君と体を重ねられていたら、もうだいぶ授業が始まっている時間になってしまったみたい。
私は元々サボるような人ではなかったから中々頷けなかったけど、白石君のさっきの泣き顔が浮かんできて私は頷いた。

すると白石君は嬉しそうに笑って、「正座してくれへん?」と頼んできた。
私は乱れた制服を直しながら正座をすると、膝の上に白石君が頭をのっけた。

「白石君は…。」
「なんや?」

私の膝の上に頭をのせた白石君とばっちり目があう。

「私のこと…好きなの?」
思っていた疑問を単純にぶつける。
だって、好きじゃなかったら体だって重ねないと思うから。
普通嫌な奴とは重ねたくないと思う。

「どうやと思う?」
白石君は意地悪く笑う。
その瞳からは何の感情も読み取らせてくれなくて、私はひたすら怖かった。

「…分かんない。」
サッと目をそらして呟く。
それでも白石君が私を見ていることもなんとなく分かってしまった。

「ね。私と付き合うのやめない?」
白石君だって、嫌だと思う。
だって私は白石君のことを゛好き゛とは思えない。
白石君だって、私のことを好きなのか分からない。
それに白石君ってモテるから。
私よりもっといい女の子のほうがお似合い。

「嫌や。」
「な、なんで?」
即答され驚きながらも私は理由を尋ねる。

「なまえって俺のこと好きやないやろ。とりあえず謙也よりもランクは下やろ?」
私は焦りながらも、コクリと頷いた。
謙也は私の中で忘れたい程特別な存在だから。
謙也より好きな人なんてそういない。

「やろ?俺な…」
白石君は一回言葉をきってから、私の頬を包帯の巻かれている方の手で包む。

「自分を段々と好きにさせてく感覚が好きやねん。」
静かな教室に響く。
この人は謙也とは違うタイプ。
少なくとも、そうはいない。

「やっぱりなまえが好きなんや。笑顔は勿論、泣き顔、脅えた様な顔も。」
左手が頬を滑り降りて、鎖骨をなぞっていく。
声をあげそうになるのを我慢してギュッと目をつぶる。

「その顔が癖になる。」
いつのまにか白石君の頭は私の膝の上にはなくて、顔のすぐ隣で。
耳元で妖艶に囁かれていた。
体を引き寄せられて、首に舌を這わされ、チクリとした痛みを感じたときにはもう手遅れ。
確認は出来ないけど、確かにそこにはうっ血の跡があるんだと思う。

「やっ……、白石君…!」
「目をつぶっとったなまえが悪いんや。」
私の必死の抵抗も虚しく、首以外にも鎖骨の辺りにもつけられてしまった。

「恥ずかしい…。」
自分の首を手でおさえて、うつむく。
「ええやないか。鞄とりに教室戻ったときに、友達から羨ましがられるで!白石君からのキスマーク!?゛羨ましい!゛って。」
その言葉で私の我慢はふっきれたんだ。

「なに言ってるの?白石君!」
自分でも思った以上に強い声がでてびっくりする。
「何?少しモテるからって思い上がって。性格悪いね!」
白石君は相当驚いた顔をしてる。
私は立ち上がってそんな白石君を見下ろす。

もう私の言葉は止められなかった。

「それになに?人に許可もとらずこんな所で体を重ねるの!?最低。見下した。」

それは冷たい言葉の槍。
言ってしまってから後悔するんだ。

言わなければよかったって。

白石君はすごく傷付いた顔をしていて。
それでもやっぱり引き返すことも出来なくて。

「さよなら。」

この場所を離れると同時に、白石君との縁もきってしまおう。
私はそう思って準備室から出た。

後ろは…振り返れなかった。





2011.12.18



 

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