幼馴染




「な。大事にするさかい…俺にのり変えん?」

謙也には白石君が見えてないみたいだった。
私は泣きながら、首を横にふる。
謙也が変わってしまった。

誰が変えてしまったの?
私じゃないか。
そう思うともっともっと悲しくなって。
優しい謙也に戻ってほしかった。

「何泣かせてるんや?」
聞き覚えのある台詞が聞こえた。
だけどあの時より、ずっと優しかった。

「白、…石君。」
嗚咽の間から漏れる声で、白石君の名を呼ぶと白石君は優しく抱き締めてくれる。
頭を撫でられてようやく安心する。

「謙也…、今回は許せへんで。」
「なんや、白石?前回と今回どう違うん?」
白石君は頭を撫でて言う。

「前回はなまえを心配してたやろ?それに原因は俺が作ったようなもんやった。」
白石君は言葉をきって私を見た。
私が白石君のYシャツを握ると、また頭を撫でてくれた。

「今回は、謙也が無理矢理キスして、なまえを泣かせたやろ?」
白石君の声は落ち着いていた。
逆に謙也はすごく動揺していて、どっちの勝ちかはもう見ただけで分かった。

「だって…だって俺はなまえが好きなんや!」
しまいには、謙也は泣き出してしまった。
唇をかんで、爪が手の平にささるぐらい手を握って。

「ごめっ…。白石君ちょっと良い?」
「あぁ。行っといで。」

白石君に離してもらって、私は謙也の近くに行く。
謙也は下を向いていて、涙が床に落ちるのが見えた。

「ね、謙也。」
「グ…なん……や?」

男の子?ってぐらい泣いていた。

「あのね、幾等好きでも強引にキスするのはよくないと思うんだ。された人はびっくりしちゃうし、した人も後で罪悪感にかられると思うから。」
「……。」

私は謙也を抱き寄せる。
親が子供にやるみたいに、そっと。

「謙也にはね、つらい思いはしてほしくないの。いつも優しくて笑ってる謙也が一番だから。」
謙也に笑いかけると、謙也はふっきれた様に言い出した。

「ごめっ…。ごめんな、なまえ!」
「いいって。許すから。」

白石君の方を振り向いた。
白石君は笑ってて、私もそれに笑い返すの。
白石君、ありがとうって。






「遊園地ってどこ行くんか?」
あの後、謙也と別れてから白石君の家で話していた。

「まだ追試は返ってきてないよ?」
私が首を傾げると、白石君は笑って私を抱き寄せて囁いた。
「なまえとすごく遊園地に行きたいに決まってるやろ?」
耳に息がかかって、私は真っ赤になってしまった。
耳って苦手なんだよね。

「んー。この辺だったら○×遊園地やなぁ。」
白石君は悪びれず、腕を組む。

「あ!行きたい行きたい!」
丁度今、クリスマスフェアやってるんだよね。
行けば、クッキーとかぬいぐるみ貰える。

「そこに決定やなー。」
白石君は私の頭を撫でて笑った。

「白石君、かっこいい服着てきてね。」
「かっこいい服ってどんなや?」
「んーと、かっこいい服はかっこいい服!」

白石君が本気でおしゃれしたのを見てみたい、っていう私のワガママ。
絶対かっこいいって思う。

「ほな、努力してみるで。じゃぁ、なまえは可愛い服な!」
「可愛い服ってどんな?」
「可愛い服は可愛い服!」

なんかそっくりそのまま返されてしまった。
でも、白石君に言われなくたって、頑張るし。
少なくとも、白石君の横歩いて恥ずかしくない服にしたい。

「でも、寒そうな服はなしや。」
「白石君も!」
「あたり前や!」

ひとしきり笑った後、また遊園地の話になる。

「いつ行く?」
「勿論クリスマスに決まってるで!」

クリスマスってカップル多いよね。
でも、そこで白石君と二人で歩けるっていうのが嬉しかった。
私はクリスマスを今までにないぐらい楽しみにするのであった。




2011.12.28



 

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