君だけの

「財前君って、ピアス穴4つもあいてるよね。痛くないの?」


私は学校帰り、後輩の財前君にふと気になったことを尋ねてみた。


財前君の耳は色とりどりのピアスに縁取られていて、とても派手。

でもそういうのが似合っちゃうところが、かっこいい。

財前君は眠そうに欠伸をしてから、少し笑う。

「穴あけるとき一瞬痛いだけっすわ。俺、先輩の耳にピアス穴開けましょうか?」

キスしそうなぐらい顔を近付けて言ってきたんだから、私は慌ててブンブンと首を横にふった。

財前君は不意打ちをよくしてくる。

私は油断出来なくて、それでも不意打ちのたびに反応してしまう。

絶対財前君は私の反応見て楽しんでるよね。

「私、いくら財前君がやってくれるんでも無理。痛いから。」

先輩は怖がりっすわ、とか言って笑ってくるんだから私は怒ったように顔を背けた。

「先輩、ごめんなさいって!」

私のことを財前君が困ったように笑ってのぞきこんできて、手を自然に差し出してくる。

私はその手を握って笑った。

やっぱり私、財前君のこと好きだな。

握りかえした財前君の手から伝わってくる熱にも、私のことを好いてくれていることが分かる。

私達は顔を見合わせて笑った。






「あ。」

服を買いに駅の中のお店に来ていたんだけど、ふと目にアクセサリー屋さんがとまった。

ピアスが中に売られていて、財前君の印象にすごく合うのがあり目から離すことが出来なかったから。

近付いて見てみると、これまた財前君に似合うピアスで。

キラキラ光るラインストーンが派手な財前君にぴったりだと思う。

値段を見ると、4000円。

安くはない値段で、普段なら諦めるけど、これ以上財前君に似合うピアスには出会えない気がしたから…。

服は諦めてピアスを買うことにした。

別に名残惜しさとかはない。

財前君の喜んでる顔に比べたら、4000円は安い様なものだから。

私はラッピングをお願いして、飾られたピアスを鞄の中にいれた。

「財前君、喜んでくれるかな…。」





「財前君!」

今日はこっちから驚かしてみようと、声をかけると同時に後ろから抱きつく。

放課後の教室で、誰もいないから出来たことなんだけどね。

「なんですか、先輩。」

そう振り返る財前君の顔はほんのり紅潮していて。

「早く帰ろ?」

驚かす側にたてたことが嬉しくて得意気に笑いながら、Yシャツの裾をひっぱる。

「そうっすね。」

顔を背けて言う財前君の手を繋いで、私は歩き出した。

「でね、財前君。」

「今度はなんですか?」

「私ね、財前君にプレゼントがあるの。」

私はラッピングされたピアスの入った袋を取り出して財前君に渡す。

財前は首を傾げて、今開けてもいいですか?と聞いてきたから、コクコクと頷いた。

「わ、ピアス…。」

財前君が驚いたような声をあげた。

「なんかこれ似合うな、って思って買っちゃった。」

「でも、俺別に誕生日でもないですわ。」

「誕生日じゃなくても、プレゼントぐらいあげてもいいでしょ?」

その瞬間、グッと体が引き寄せられた。

財前君に抱き締められてると理解するまで少しかかる。

「財前君…?」

「なまえ……先輩。」

名前で呼ばれることなんて最近なかったから、少し驚いた。

囁かれるような声に頭がクラクラする。

「俺、なまえ先輩のこと大好きですから。」

「ん…。」

いつもは素直じゃない財前君がいきなりそんなこと言ってきたんだから、驚きと恥ずかしさがまじる。

「なにがあっても離しませんから。」

「ん。」

照れたような顔を見られないように下を向いて頷いた。

「そういえば先輩。俺5個目のピアス穴開けたんです。まだ何にもついてませんし、先輩そのピアスつけてくれません?」

腕から解放され、私より背の高い財前君は屈んで片方の耳を指差した。

確かにまだなんにもついてないプチリとした小さい穴があいてる。

「え。でも私…。」

上手くつけれないかもしれない、と言おうとしたら財前君に止められた。

「先輩につけてもらいたいんですわ。」

分かったと頷き、私はピアスを片手に財前君の耳に触れる。

近くにある財前君と目が合って、紅潮が止まってくれない。

手が震えて上手くつけられない。



「で、できた…。」

やっとつけ終え溜め息をついた途端、頬に何か触れた。

「!」

それが財前君の唇で、理解すると更に頬が熱くなった。

「先輩、無防備すぎですわ。そういう所も可愛いんですけど。」

「う…。うるさい!」

顔を背ける私に、財前君が手を差し出してきた。

それを握り、また歩き出した。







後日。


「このピアス穴は先輩からもらったピアスだけつけます。」

「え…。あ、ありがと……。」

「それとこれお返しのネックレスですわ。」

「可愛い!ありがと!」

「つけてあげましょうか?」

「え、あ、うん…。」






君の可愛いその顔が好き
(照れた顔も喜んだ顔も、怒った顔も。全部大好きですわ)

友人からのリク。
多分財前君はもらったピアスの値段、分かってたんだと思います。
お返しは、それ以上の値段のネックレス買ってそうですね。
財前君の口調よく分かりませんでした。



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