※滝さんの口調まったくわかりません。申し訳ありません。


「勝つのは俺だ。」
あんな人に会ったのはこれが初めてだった。

「今日は俺の試合応援来てくれてありがとな。」
「バーカ。応援に来たんじゃなくて、滝が危なっかしいから見にきただけ。」
「ったく、素直じゃないなー。」

氷帝の大きなテニスコートの端に私と滝はいた。私は滝に頭を撫でられて睨んだけれど、滝は笑ってた。
なんだかんだ言って滝が好き。と言っても恋愛対象というより親友として、だけれど。気の強い私はすぐ生意気なことを言ってしまう。治さなければいけないと思いつつ、やっぱり口調がキツイ。だから小学校の頃浮いてしまっていた。そんなとき、私に話しかけてくれたのが滝で。滝が友人に私を紹介してくれて、私の友人の輪は広がった。感謝、しきれない。お礼を言う気はサラサラないけれど。

「で、試合はいつなわけ?」
「ん。跡部……テニス部部長の次。もともとランダムな試合順だからな。氷帝の練習試合は。」

滝がそう言い終わった丁度、呼んだか?と言って誰か来た。
茶色の髪で左右にはねた髪。滝より身長も(多分)高くて、イケメンの部類に含まれるのか彼を見る女子の目が逝ってる。

「あー、跡部だ。」

滝が紹介してくれてようやく納得した。まったく興味がなかったから知ろうとも思わなかったが、そういえば氷帝テニス部イケメン部長だとか。

「はっ。お前も俺のファンか?」

確かにまぁ顔はいいほうだと思った。だけど、

「性格最悪。自意識過剰。」

隣で滝の焦る気配がするけれどどうでもいい。それよりも目の前の自意識過剰な人だ。私の言葉を聞くと目を見開いてから、いきなり笑い出した。もしかして自分が罵倒されて喜ぶM体質なのか。この顔でそれはどうかと思うけれど。

「面白れーじゃねーの!あーん?」

大声でいきなり笑ったと思うと、顎をつかまれて持ち上げられた。見下ろされている感が半端ない。ブルーの目に心の奥底まで見透かされそう。
これが滝ならすぐ抵抗してやった。ただ、この人は。体が石になってしまったように動けない。
でもせめて睨んでやった。見つめられるのなら、こっちだって嫌と言う程見つめ返してやって。

「その目いいな。他の女とは違う。よし、俺と付き合え。」
「は?なにをっ、」
「お前さ、旧家の人間なんだろ?なら勿論結婚相手も決まってるわけだ。」
「仕方ないじゃん。だからなに?」
「諦めていいのか?」

一瞬周囲の酸素が薄くなったような錯覚をした。
“諦めていいのか?”
それは私が幼い頃から持っていた疑問。決められた自分の人生。1度きりの人生を、旧家故に生き方を決めつけられていいの?
諦めていたはずなのに。またこの疑問が浮かんでくる。

「私、は……」
「俺が鳥籠から出してやるぜ。」

飼い殺されるより、自由に空を翔びたい。与えられる餌を食べ続けるより、好きなものを食べたい。きっと鳥籠の鳥もそう思うはず。そして、鳥籠の中の私も同じ。

「私を、出してっ」

鳥籠の前に立つ人間に鳴くように私は言った。どうか鍵を開けて私を連れだして。

「いいぜ。」

引き寄せられて唇が重なった。その瞬間、鍵が空いた気がした。


■あとがき
申し訳ありません。全然リクエストと話が違うことになってます。本当にすみません。主人公さんの勝ち気キャラが中盤で消失してたり、滝さんがいつのまにか消えたり、展開が早かったり。なんとお詫びしていいか!
ただけっこう好きなお話となりました。こういう家に縛られる系好きです。雪花様、リクエストありがとうございました。

20120715



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