「最近ブンちゃんの行動は目に余るんじゃけど。」
「うっせぇ。」
みょうじが屋上から出て行ったあと、俺はそう静かに伝えた。だがブンちゃんはそんなこと聞く気がないのか只の生返事のみ。気になるのは自分を体育倉庫に閉じ込めた理由だろう。
「みょうじが辛そうじゃから、少しでもブンちゃんから離してあげようて思ったきに。だから俺はお前を体育倉庫に閉じ込めた。」
「お前、俺に協力するって言ったろ!」
いきなり声を荒げた。全く、精神が幼すぎる。これでも誇りある立海大テニス部員かと問いたくなる。もっと落ち着きを持ったほうが良い。
「嘘吐いたのかよ!おい!」
何も物事が分かっていない。さっき理由は話したというのに。『察する』という言葉を知らないらしい。
何も分からずただ怒鳴り散らすブンちゃんにだんだん怒りすら覚えてくる。自分のことしか考えていない。自己中な人間すぎて、もう笑いを通り越していた。
「自己中。」
「はっ!?意味分かんねーんだけど。」
「だから自己中言うとる!人の話も聞かん。自分の言いたいことしか言わない。人のことを考えてず、自分の欲求に馬鹿正直。だから自己中言うとるんじゃ!」
思っていたことを口に出した。ブンちゃんの表情が驚きに変わっていく。でも、俺の言いたいことは止まらなかった。
「好きにさせる?違う。お前のしてることはみょうじを傷付けているだけだろ!」
怒りのあまり方言をつけることを忘れてしまう。でも気にならない。これで少しでも丸井のみょうじに対する態度が良くなれば。そしてブンちゃんに大切なことに気付いてもらえるように。俺は思いをこめて叫んだ。
「お、俺は……。」
下を向いてうつむくブンちゃんに言い過ぎてしまったかと少し後悔する。手を体の横で握り締める仕草が弱々しく見えた。俺よりも低いその丈がそれを助長する。
「とにかく気を付けんしゃい。」
俺はブンちゃんの頭を撫でて、制服のポケットに屋上の鍵を入れた。体育倉庫に閉じ込めていたときに抜き取ったものだ。でも、元は俺のものだから文句言えないと思うが。
「さ、教室戻るか。」
ブンちゃんを背に、俺は屋上を出た。変わるのはお前しだい。
20120627
(私は仁王はわざと方言をつけていると解釈しています)