どうしよう。平凡だったはずの私の学校生活が変わってきている。これからも変わらず穏やかに過ごしていくはずだったのに。見た目は天使、でも性格が最悪な奴のせいだ。
学校に行くのが鬱だ。もういっそのこと、この通学路を右に曲がりま繁華街に行って学校さぼってしまおうか。


「よう。お前さんなんかうかない顔しとるの。」


そんな大層なことを考えていたものだから、いきなり私に向けられた声にとても驚いた。不自然に染められた白い髪に、意地悪く弧をえがく唇。


「仁王くん……。」


丸井くんの友達。ということは害をなす可能性があるかもしれないということ。
……確実に関わらないほうがいい。
私は素晴らしいぐらいのスタートダッシュをした。


「ちょ、何故逃げるんじゃ!?」
「さようならー!」


だけど相手は学校一の運動量をほこるテニス部。逃げ切れるわけなかった。


「つかまえたぜよ!」
「…………。」


腕をつかまれて、強引にとめられた。関わりたくないのに。


「そんな浮かん顔しとるのはブンちゃんのせいじゃろ?」


仁王くんのせいでもある。だけど諸悪の根元は丸井くんかと思い直して頷いた。


「まぁ、驚いたじゃろうな。あんな弟キャラなブンちゃんが実は生意気だったなんて。」


全くもってそうだ。生意気なんて優しいものじゃない。丸井くんの場合はそれにセクハラがある。体を触られたときは正直怖かった。


「ブンちゃんにはいろいろ気をつけんしゃい。なにしてくるか分からんきに。」


私を思って言ってくれているであろうその言葉が嬉しくて私は頷いた。「学校行くじゃろ?」と言って私の手をひいてくれた。










私が丸井くんを避ける技術は逸品級だったと思う。休み時間は隣の教室で友人と過ごし、授業中は横を全く見ずにノートと先生の言ってることに集中する。






「で、いつまで逃げるわけ?」
だけど丸井くんと私は同じ環境美化委員に入っていて、流しが綺麗かチェックする際同じクラスの彼と行動しなくちゃいけない。全く忘れていた私は心の中で頭を抱えた。


「別に逃げてたつもりはないけど。」


軽く長そうと、短く告げてから委員会で配られたプリントに目を落とす。次行かなきゃいけないのは職員室前の流しか。
行くよ、と呟いて職員室に行くために階段をくだろうと足を向けたけれど、丸井くんに腕をつかまれてその場から動けなかった。今日二度目。一体何の用だろうか。嫌な予感を打ち消すために仕切りにそう思った。


「気にくわねぇ。」


丸井くんは短くそう告げると近くの空き教室に私を引きずりこんだ。


「なにすんの!?」


多分あまり使われていない教室だと思う。なんというか埃っぽい。
丸井くんは扉をしめて鍵をかけると、近くの椅子を乱暴にひいて座った。


「なんでそんな態度なわけ?」
「態度ってどういうこと?」
「自分の立場分かってない態度に決まってるだろぃ?」


丸井くんは苛立ったように立ち上がると、私の顎を彼の綺麗な指でもちあげられた。見下ろす視線が冷たくて。だけど顎をあげられてるからその視線から逃げることも出来ずに、ただ恐怖の涙をこらえて見上げていた。


「そういうのさ、すごくそそるんだけど。」


そう言って丸井くんは私の制服のリボンに手をかけた。私は抵抗して丸井くんの体を押した。思いの外おした力は強かったみたいで、丸井くんはよろけて後ろの机にぶつかった。
今のうちに逃げよう。そう思って私は廊下へと走り出した。








これは悪夢ですか?私は壁に追い詰められて、目の前にはドアップの丸井くん。逃げたかったけれど、もう後ろにさがれないということを固い壁が主張していた。


「やめてよっ。」
「お前がなめたような態度とったのがいけないんだろぃ?」


逃げ場がないことをいいことに、丸井くんは私の両腕を左手一本で壁に固定した。右手でリボンを乱暴に取り払う。そのままブラウスのボタンにまで手をかけてきたのだから、恐怖でいっぱいで苦肉の策として足で蹴ろうと思いついたとき。


「抵抗なんてしたら更に酷くなるからな?どうせみょうじは逃げ切れないよな?」


まるで心を読んだようなタイミングでそう告げてきた。私は多分すごく驚いた顔をしていたのだと思う。そして抵抗することも躊躇した。
だって逃げたところで、さっきみたいに丸井くんに追い付かれるだけ。


「そう。それでいいんだよ。侵しはしないし、優しく触ってやるから。」


―――侵しはしない。
そんな言葉が出てくるとは思わなかった。もし抵抗してたら侵されていたってこと?もうやだ怖い。
ブラウスのボタンを1つ、1つと外していく。1つ外されるたびに恐怖が募っていく。
ブラウスが全てはだけると丸井くんはキャミソールの中に手を入れた。私の胸はまだ未発達だからホックつきみたいな大層なブラジャーはつけていない。丸井くんは鼻で笑ってそれを上にまくりあげた。露になった胸を見て「胸ちいせっ」とか呟いている。


「デカくすんの手伝ってやるぜ?」


丸井くんは意地悪く笑っていうと、触り始めた。この場合は揉むという表現のほうが正しい気がする。おされる度体が反応する自分が嫌らしい。屈辱。恋人でもない人に見られたくない。触られたくない。
また涙が出そうになっていると、目の前の奴が愉しそうに私の顔を見るのだから私は心に決めた。


丸井くんの前では絶対泣かない。


これが私の陰ながらの抵抗。


2012.05.10

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