「みょうじさんがこの告白を受ければ、君は俺の正式な恋人だ。彼氏という立場で守ってあげるよ。」

その顔はとても真剣で、でもその目に私は映っていなかった。ここにはないものを見ているようで少し寂しかった。

「幸村くんは凄いね。丸井くん助けるためには彼女だって作るんだね。」

気付けば口から出ていた。止めようと思ったけれど、もう口に出してしまうと溢れて止まらなかった。

「でもそんな自己犠牲私はいらないよ。」
「みょうじさん……?」
「これは私と丸井くんの問題だから私がなんとかする。」

幸村くんは言われるとは思ってもいなかったことを言われたからか、ただ目を丸くしている。
それにね、と私は付け足した。

「そんなことをしても丸井くんのためにはならないよ。ただ思いが残るだけ。中途半端な思いは中途半端な終わりしかもたらさない。」

最後まで言って私は我に返った。せっかく誰であれ助けよう思って決断したのにこんな形で拒否してしまって。絶対に怒るに決まってる。
私はふってくる罵声や暴力を覚悟してうつむいたけれど、そういったものはなにもこなかった。ただ、いきなり抱き締められていた。

「ちょ、幸…村くん?」
「なんだろ、俺。すごく正論言われた気がしてさ。最初は悔しかったけれど、みょうじさんの目を見ていたらこうしたくなったんだ。君に気なんてなかったはずなのに。」

言われている意味が分からなくて幸村くんの顔を見上げると、彼は泣きそうな顔で眉尻を下げて笑っていた。そんな顔をしてほしくなくて、ただ純粋に笑ってほしくて、私は腕を幸村くんの背中に手を回して子供をあやす様に撫でたらさらにきつく抱き締められた。

「っ…。苦、し……、」

少し抵抗をしようと思った丁度そのとき。誰もいないはずなのに教室の扉が開いて、丸井くんがそこに立っていた。
目を向けると見たことがないぐらいの冷たい目で私たちを見ていた。私は強引に幸村くんの腕の中から出ると丸井くんのほうに向いた。

「へぇー、みょうじはゲーム放りだして幸村くんとくっつくんだ。」
「違、」
「じゃあなんで幸村くんと抱き合ってるわけ。一方的に抱かれるならまだしも抱き合ってるじゃん。」

なにも言えない。だって私が幸村くんに腕を回したのも事実であって、言い訳しようがなかったから。
それでも悔しかった。私のゲームを続けるという決意を、丸井くんの一言で否定されたような気がして。私は唇を噛んだ。

「ブン太。みょうじさんは何も悪くないから。悪いのは俺…」
「幸村くんは黙って2人きりにしてくんない。俺とみょうじの問題だから。」

丸井くんは満面の笑みで告げた。いつもならこの程度で怯まないはずの幸村くんはうつむくと出て行ってしまった。多分“私と丸井くんの問題だから”、“俺とみょうじの問題だから”という言葉を繰り返されたから。2回ものけ者にされて傷付かない人間なんてそういるはずない。

「邪魔者も消えたわけだし、どういうことか話してくれない?」

そう言われると私は壁に押し付けられた。





「ふーん。そんなことがあったんだ。」
「うん。」

私は恐怖と緊張でなかなかスムーズに言葉を発することが出来なかったけれど、なんとか最後まであったことを伝えた。丸井くんはうんうん頷いてくれて、信じてくれたのかななんて安心した。

「なーんてな。信じるかと思ったか?」

丸井くんはそう言うとケラケラ笑い始めた。ここが旧校舎でなければ人が私たちに気付いてくれたのに。

「話なんていくらでも創れるんだよ。絶対お前がゲーム続けたいなんて嘘に決まってるだろぃ。あー、馬鹿らしくて笑いが、止まんねっ!」
「信じてよ…。」
「信じてほしかったら脱げ。脱いで俺に懇願しろよ。」

私は唇を再度噛むと、自分のリボンに手をかけて取り去った。うつむいてブラウスのボタンを外していく。今手を止めたらダメ。せっかくの決意が緩んでしまいそうだから。
ブラウスとジャンパースカートを脱ぐと下着にも手をかける。どうせ丸井くんなら全裸にならなきゃいけないに決まってる。ブラジャーに手をかけた。スポーツタイプだからズボっと脱げば簡単に脱げる。

「おい……」

声をかけてくる丸井くんのほうなんて見ずに私は一気に脱ぐ。窓に映った自分の姿が視界に入って、すごくそれが情けない姿で。あぁ、涙が出てきた。泣かないって決めたのに。なんでこんなに涙が止まらないの?

「もういいやめろ!」

それでも最後に残った下着を脱ごうとしたら、きつくきつく抱き締められた。さっきの幸村くんより痛いぐらい。だけどあったかくて、何故だか涙がさらに溢れては止まらなかった。

「もういい。もういいから。」

そう言ってくれるその言葉が涙を助長させていた。


20120807

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