声が、聞こえる。パチパチと何かが爆ぜるような音に混じって。今にも消えてしまいそうな声が、掠れた声が。開いた目の前には赤。その赤が一体どちらの赤だったのか分からない。でもきっと両方の赤。熱いのに、頬に落ちるのは温い雨。「……貴女だけでも、生きて…」ぎゅっと抱き締められる。なのに、触れていた腕が力なく離れていく。どこかで人の叫ぶ声がする。続いて見知らぬ人が腕を掴んできた。そこで漸く高い声が自分を抱く人の名を呟く。「…おかあ、さん…?」Prev Novel top Next