促して上げたらちづちゃんはやっと鍵盤に手を置いた。
最初は確かめるように、怖々弾き始めて。
でもそのうち楽しそうにちづちゃんの顔が笑顔になったの。
キレイにピアノを弾くからオレ見入っちゃったぁ。
しかもどっかで聞いたコトのある曲なんだよねぇ。
……なんだったっけぇ?
ちづちゃんが弾き終えるとしーちゃんはちっちゃく拍手する。
「…ベートーベン、ピアノソナタ‘悲愴’第二楽章。」
「! わ、分かるんですか…?」
「前に、弾いたことがある。」
しーちゃんは分かったみたい。
パッて嬉しそうにちづちゃんが笑う。
オレってば取り残されたみたいでなんかぁ、つまんなーぃ。
「志貴、行くぞ。」
泰河はしーちゃんに声をかけると、しーちゃんはアッサリ外に行っちゃったぁ。
ちづちゃんはちょっとだけ話したそうだったけどぉ、今は泰河サンキューって感じぃ。
「ねー、ちづちゃん。オレが知ってるの弾いてぇ。」
「え?」
「簡単なのでイイからさぁ。」
「う、うーん…。」
困った顔でちづちゃんが鍵盤に指を置く。
弾き出したのは………猫ふんじゃった?
うっわー、ちょー懐かしい!
しかもドンドン早くなってく!!
弾き終わったちづちゃんにスゴイって拍手したら笑われちゃったぁ。
ってか弾く人によってピアノってやっぱ違うんだねぇ。
しーちゃんと比べてちづちゃんのピアノの音って柔らかいなぁ。
ちづちゃんみたい。
「ねぇねぇ、ちづちゃん。」
「?」
「ちづちゃんって好きなヒトいないのぉ?」
「え?!」
ビックリした顔も可愛いなぁ。
これくらいでホッペ赤いし、目線泳いじゃってるよぉ。
いないんだぁ?って聞き直したらうんって。
そっかぁ。まだオレのコト好きになってくれてないかぁ。
会ってそんな経ってないもんねぇ、仕方ないかなぁ。
オレはちづちゃんのコト、マジで好きなのに。Prev Novel top Next