「ねえ、お母さん」
「なぁに?」
「何で弓弦くんはあんなに許婚の話に乗り気なの?まだ会って数ヶ月しか経ってないのに、すごくグイグイ来る気がするんだけど」
「ああ、アンタの写真とかビデオとか毎年姉さんのところに送ってたからねぇ」
「………はい?」
「実を言うとね、姉さんは女の子が欲しかったらしいのよ。でも生まれて来たのが弓弦くんで、あたしが透を生んだもんだから、姉さんったら弓弦くんがアンタと結婚すればアンタが娘になるって考えてるのよ、きっと」
「まあ、もし結婚したら確かにそうなるけどさあ…」
「だから姉さん、弓弦くんに小さい頃から‘この子が未来のお嫁さんの透ちゃんよ’って写真とかビデオとか見せてたわね。」
「そういえばそんなこと弓弦くんも言ってたような…?」
「あたしとしてもどこの馬の骨だか知らない男に可愛い一人娘をやるより良いと思って受けたの。お父さんだってそうよ?でも一番望んでるのはやっぱり弓弦くん本人だと思うわ。アンタに会いたくてずっとずっと頑張ってきたんだもの」
「うーん…」
「それで、どうなの?」
「なにが?」
「だから弓弦くんのこと。良い子でしょ?」
「…それは、まあ、うん」
「煮え切らないわねぇ、何が不満なの?」
「や、不満なさすぎて逆に困る。平凡なわたしとつり合い取れないじゃん」
「アンタそんなこと気にしてたの。別につり合いなんて関係ないでしょう?お互い好きで良いと思ってるならそれで十分。周りのことなんて放っときなさい」
「そういうもんなのかなぁ…」(だって人って優劣を付けたがるから。)Prev Novel top Next