志貴が眠ったのを確認すると、泰河は立ち上がる。
そのまま銀二の服の襟を掴んだ。
「おい、行くぞ。」
「どこにぃ〜?」
「学校だ馬鹿。今週一回も行ってねぇだろーが。」
「ぇえ〜、やだなぁ。つまんないじゃん。」
不良というだけあって二人はあまり学校へ行かない。
単位についての話なら、既に今年はもう進級できなくなっているのだが、本人たちに自覚や焦りはない。
とりあえず週一くらいは来いと言われ、来なければ退学とも脅されているので仕方なしになのだが。
私服のまま泰河と銀二は店を出て単車に乗り込んで学校へ向かった。
近場の学校なのですぐに到着したが、授業中であるため校内はシンと静まり返っている。
土足厳禁という言葉は二人には何の意味もなく下駄箱を通り抜けて階段を上がり、自分の教室へ行く。
泰河と銀二はクラスが同じなので必然的に同じ方向へ向かうのだが、何せ授業中の他の教室を覗いたり悪戯しようとしたりする銀二のせいで遅くなる。
置いて行こうとすると無理矢理引き留められることを理解しているので気が済むまで好きにさせ、終わればまた歩き出した。
「うーあー、マジつまんねぇ〜。」
などと言いながら教室に銀二が入れば授業が中断される。
数学の時間だったのか教師がチョークを黒板に付けたまま硬直していた。
「おっは〜、これで登校したよね?もう帰っていーぃ?」
「アホ。一時間くらい受けろって言われてんだろ。」
「やだムリ。数式なんて見てたらオレってば眠くなっちゃうよぉ。」
「だったら寝てろ。」
隣り合った席に座り、二人は思い思いのことをし出す。
泰河は窓の外へ視線を投げかけ、銀二は机に突っ伏して寝る。
それを見てから漸く数学の教師は途中だった数式を黒板に書いて説明をし出した。
二人は恐れられてはいるが普通の一般人に意味もなく危害を加えるような人物ではない。
その辺は理解されているため周囲も彼らに関わらないように、教師も彼らに必要以上声をかけないように努める。
…クソつまんねぇな。
窓の外に見えるグラウンドをぼんやり眺めながら泰河が軽く舌打ちをすると、周囲の席の生徒の肩がビクリと震えた。
数学の授業など聞いてる暇があるなら街で他の不良を潰している方が泰河にとっては有意義に感じられる。
将来使う必要もなさそうな授業など何の意味もない。
気怠い気持ちのまま泰河も机へ体を伏せ、カリカリと響くシャーペンの音と、教師の声をBGMに眠りへ落ちた。Prev Novel top Next