次の日、先生に朝から呼ばれた。黒板に学級委員は朝学校に来たらすぐに職員室まで来ることなんて書かれていたのだ。及川はいなかったので、私単独で教室に向かった。
『先生、学級委員です』
「おお、よく来たな」
先生は机の上の大量の冊子を指さした。
「これ、教室に持っていっといてくれ」
はあ?内心そう思うような量の冊子だったのだ。一応持ってみたが、かなり重い…が一人で持てなくもない。往復するのが面倒だった私は何とか冊子を持って、職員室から出た。
重い…。やっぱり重い…。そう思いながら運んでいると、後ろから声をかけられた。
「あれ?なまえちゃんじゃん?おはよー」
及川徹のお出ましである。
「てかすごい量の冊子だね。何これ」
及川が私の持っていた量の半分以上を持っていって、そのまま私の横を歩いた。
『え?持ってくれるの?』
「そりゃあね。なまえちゃん女の子だもん」
お、女の子だもんだなんて台詞高校入って言われたのはじめてだわなんて思った。別に男らしく過ごしてるつもりはないけどそんなこと言ってくる男子もいなかった。
しばらくフリーズしてると、あれ?照れた?なんて軽口が聞こえた。
『及川に言われて照れるわけないでしょ』
「うわ、ヒドイ」
でもこの量持つなんてなまえちゃん力持ち〜!なんて隣で笑ってる及川に肘うちした。
教室に入って及川が黒板を見る。
「もしかしてこれ取りに行ってくれてたの?」
『そうだよ』
「ごめんね。ありがと。でもちゃんと力仕事なら俺呼んでよ?」
及川がタオルで少し濡れている髪を拭いていた。
「俺朝は基本的に体育館で自主練してるからさ」
あ、俺バレー部って言ったっけ?なんて及川が言った。
『知ってるよ。ちゃんと次からそうするよ』
「うん、上出来」
笑う及川に何だか私も笑顔になった。
「あ!やっと笑ってくれた!」
及川がそんなことを言った。
『何言ってんの?私が及川に笑いかけるわけないでしょ』
「いーや!笑ったね!俺見たから!」
「おいクズ川!!!」
教室のドアが勢いよく開いた。その勢いのまま教室に入ってくる男を私はよく知っていた。
「お前片付け位して帰れ!」
「えー岩ちゃんがやってくれるって俺知ってるもん」
「やらない方が問題なんだろうが!!!」
岩泉。昨年同じクラスだったなかなか話してて楽しい友人だった。
『岩泉おはよう』
「ああ、みょうじか。おはよう。てかお前及川の隣か「エ!?ちょっと待って岩ちゃんとなまえちゃん友達なの!?」
岩泉の声は途中及川の声で聞こえなくなった。
『去年同じクラスだったからね』
「お前は人が話してるときに話しかけるな!」
岩泉は及川に肩パンを食らわせる。及川は、やめて!いたい!とか言ってる。そうか。二人はバレー部だし仲良いのか。
チャイムが鳴る前に岩泉は自分の場所へ戻った。
「岩ちゃんいい人でしょ」
『うん。話しやすい』
「じゃー俺は?」
『どうでもいいかな』
「何で!?」
及川が目に見えるように拗ねた。面倒くさい男だと思う。でも、思ったよりずっと及川はいいやつだと思う。そんなこと言ったら及川は目に見えるように喜ぶかもしれないから絶対言わないけどね。
モテるのも何となくは、あくまでも何となくはわかったよ。
理由はなんとなくならわかる