マラソン大会の時のあの胸の痛みがなんだったのか。少し時間が経ったなまえにはもうわかっていた。

…最初は全然好きじゃなかったしそれどころかドン引きだったのに。

いつの間にか一緒にいるのが当たり前になっていた。ばかなことを言い合って、岩泉が及川に冷たく当たって。それを見て笑う。そんな時間がとても好きだ。今まで、私たちは友達として仲良く過ごしてきた。でも、私がこんな想いを抱いてしまった。叶うかもわからない、叶ってもいつ壊れるかわからない、そんな儚くてどうしようもない気持ちを抱いてしまったのだ。


それに及川はモテる。相手に困ることなんてないであろうくらい。それも可愛い子だってたくさんいる。私なんて、相手にされるはずがない。

自分でそんなことを思って悲しくなった。もちろん本音を言えば、私の頭だけを撫でて欲しい。私の手だけを引いてほしい。私のことだけ好きでいてほしい。


でも、そんなの叶うはずもない。もし叶ったとしても、いつまでも及川の隣にいれるわけがない。



私は自分の想いに気づいた。及川がすごくすごく好きだ。わかってる。自分が一緒にいれたらいいと思ってることもわかってる。ただ、恋人として二人でい続けるのはまだ高校生の私たちには難しすぎると思った。悲しいけどそれは現実だった。

私は及川のことがすきだけど、及川の隣に居られる一瞬のためにこの気持ちを及川に伝えるなら、それよりも友達としてずっと岩泉たちと一緒に及川と一緒にいたい。実際長い付き合いになるのなら、及川が何人と付き合って結婚するかはわからないが、何度も悲しい思いをするだろう。何度も涙が出るかもしれない。私がこの気持ちを捨てきれない限りは。でも、それでもいい。一瞬の嬉しさで及川と過ごす長い時間を失うよりはましだ。

だから、私はこの気持ちを胸にそっとしまっておく。きっとしばらくは大きくなり続けるだろうこの気持ち。でもどれだけ大きくなっても私は及川にこのことを伝えるつもりはない。


逃げだって言われても構わないよ。ただ、私は自分の気持ちから逃げてまで及川と一緒にいたい。それだけのことだ。



なまえは自分の部屋の電気を消した。明日も学校だ。もう寝たい。自分の気持ちに蓋をするという決意をしたなまえの悲しそうな笑顔を見た人は誰もいなかった。


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