理由付けなんてしちゃって
「あれ?なまえのことだから既にチェック済みかと思ってたんですけどー、明日は隊長の誕生日ですよー」
目の前のフランさんから衝撃的な一言をいただいた。
『明日!?明日ですか!?』
「はいー。だからあのオカマとか張り切ってるんですよー」
フリフリエプロンを揺らしながら明日のメニューはー…と指折り確認しているルッスーリアさんを、フランさんが指さす。
『明日!?どうしよう!?何も準備してない!!!!』
頭を抱えて必死に考えるが、何も浮かばない。今はもう夕方だ。しかも今から任務。明日朝から買いに行くしかない。
「まぁ大丈夫ですよー。あのロン毛隊長毎年自分の誕生日忘れてるらしいんでー」
『え?そうなんですか?』
「なんだかーボスがこの時期は必ず故意に任務を立て続けにいれてるらしくてー」
『…だから最近ものすごく忙しいんですね…』
肋骨も治って仕事に復帰したら想像以上にものすごい量の仕事が待っていると思ったらそういうわけだったのか、と一人納得。
「ま、ミーもまだ何あげるか考えてませんけどねー」
『大丈夫なんですか』
「なまえは人の心配してる場合じゃないでしょー」
ホラ、とフランさんが時計の方を見る。もう出発時刻まであと5分しかない。
『うわぁ!隊長待たせちゃいますんでもう行きますね!ありがとうございます!』
私は頭を下げてその場を立ち去った。その背に向かっていってらっしゃーいと無気力な声がした。
明日は隊長の誕生日かぁ…何が欲しいんだろう。そう思って、車の中で隣に座っている隊長を眺めながら思った。
「どうしたぁ?何かしたのかぁ?」
『え?いやなにもないです』
隊長が好きなもの。剣。でも剣のものをあげることはできない。隊長のお気に入りとか色々あってまだよくそれがわからないからだ。
それに急にあげたりなんかしたら驚いたりしないだろうか。あげても迷惑じゃないだろうか。そんなことを思って悩む。でも私はあげたい。ただ、それだけなのだ。
「じゃ今日もとばすぜぇ!!!」
隊長は楽しそうに笑っている。とりあえず思案はやめて任務だ。私は隊長の後ろに立つ。
『はい』
銃とナイフを持つ。そのまま隊長の剣が降り下ろされ、任務はスタートした。
思いの外任務は予定より早く終わった。帰りの車でまた思案が始まる。
「う゛ぉい、お前ずーっとボーッとして何だぁ?また具合でも悪いのかぁ?」
隊長が私に言った。
『いえ!大丈夫です!元気ですよ』
「ならいいけどなぁ」
隊長はため息をついた。
「お前が元気ないとこっちも何だか気が乗らねぇ。いつもみてぇに笑ってろぉ」
隊長と目が合う。うわ、ずるいと思った。でも嬉しい。
『はい!』
そう笑えば、隊長も満足そうに笑った。もう明日の朝急いで買いに行こう。そしてその時隊長にいいなぁって思ったものでも買おう。
私が渡したいだけだが、最も直接話す機会の多い部下なのだ。たくさんお世話にもなっている。お世話になってるので、と渡せれば私は十分なのだ。
「今日の報告書は俺の番だなぁ」
『はい、お願いします』
私が風邪を引いてから、任務の報告書は二人で交代で書くことになった。あ、そう言えばフランさんも買ってないって言ってたからお誘いしてみようかなーなんて思いながら、隊長と話して帰った。
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