Let's party!
時間になり、私は隊長の部屋に再び向かった。
『隊長、ボスがお呼びです。幹部は全員集合だそうです』
隊長はそういうと立ち上がり、私と一緒に歩いた。ドアを開けると、大きなクラッカーの音。そして、紙吹雪…の中に混じるナイフ。
「な゛、なんだぁ!?」
隊長はしっかりナイフを避けて、弾幕の文字を見る。スクアーロ誕生日おめでとう、の文字を。
「ああ、今日誕生日だったのかぁ」
「やっぱり今年も忘れてたのねぇ〜」
ルッスーリアさんの声が聞こえる。
「なまえちゃんありがとうね」
ルッスーリアさんが笑った。
「しし、主役は素直に王子の祝いのナイフに刺されろよ」
「祝い方が見事にぐっちゃぐちゃに歪んでますねー。人間とは思えませーん」
「お前ら!ボスの前でうるさくするな!」
「るせぇ」
すごく賑やかだ。隊長は怒鳴りながらナイフやらグラスを避けている。
「てめぇらぁ!祝う気あんのかぁ!?」
「ねぇ」
「ししし」
ルッスーリアさんが3人を牽制して、その場は静まる。
「なまえも入れよ。突っ立ってないで」
ベルさんが私に手を差し伸べてくれたので、私はそこに入る。ルッスーリアさんが作った美味しそうな料理がずらりと並んでいて、食欲をそそる。
グラスにワインを注がれる。
『ルッスーリアさん、私も手伝いますよ』
「あら、大丈夫よ。だからスクアーロが暴れださないよう見張っててくれるかしら?」
隊長は少し居心地が悪そうな顔をして座っていたので、隣に失礼して話しかける。
『居心地悪そうな顔してますね』
「あんまり祝われたりするのなれてねぇからなぁ」
『そうなんですか。でも、お誕生日おめでとうございます。隊長』
そう言うと、おうと短く返事をした。
その後はおいしいご飯を食べて、皆が隊長にプレゼントを渡していた。
「なまえちゃんは渡さないの?」
ルッスーリアさんが言う。
『あ、持ってくるの忘れちゃって…』
渡せないと思った、とは言えなかった。ルッスーリアさんはそうとだけ返事をしてどこかへ行ってしまった。
あっという間にパーティーは終わってしまった。解散となり、皆広間から出る。私と隊長は部屋が近いので途中まで一緒だった。
『楽しかったですね』
「そうだなぁ」
ケーキも食べれたし、まぁナイフが投げられたりはあったがそんなの自分達にとっては何てことないのである。いいパーティーだったと思う。
「なんかこんなこと言うのも何だけどよぉ。お前プレゼントあるんだろ?ルッスーリアとの会話が聞こえてなぁ」
何も返せなかった。だって、あれは買わなかったことにしようと思ったのだから。
『隊長はたくさんプレゼントを貰ってますね。日中に見ましたよ。いっぱい届いてるの』
「そうなのかぁ」
『はい。それはもう高級なものがたくさん。超有名ブランドとかが多くありましたよ』
息を深く吸う。
『だから、私の渡したいものは他と比べると随分価値の低いものなのであげられません。すみません。もっとちゃんとしたもの買えるまで待っててもらえますか?』
「俺は短気だからなぁ」
隊長がそう言った。まってて、もらえないか…。
「なまえが選んでくれたものがあるんだろぉ?俺は価値なんか気にしてねぇ。お前が選んでくれたものが欲しいだけだぁ」
何も返せなかった。隊長がそんなことを言ってくれて、びっくりしたのもあるが、何よりも嬉しかったのだ。心臓の音がまるで耳元に心臓があるかのようにドクドクと大きく聞こえる。
『本当に他の人たちに比べれば小さなものですよ?』
「んなこと別にいい」
隊長と目が合う。あまりにも真っ直ぐな目にこっちは溶けてしまいそうである。
『…部屋にあるので戻ってから届けてもいいですか?』
「わかった。さっさと来いよぉ」
タイミングよく、隊長の部屋の前に辿り着く。ではまたあとで、なんて今まであまり交わしたことがないような言葉を交わして私たちは一度分かれた。
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