愛しき匂い(銀魂 土方)


あなたはいつだって仕事ばかり。鬼の副長から仕事の鬼に名前を変えてもいいと思うくらいによ。

「悪いな、構ってやれなくて」

『いつもお仕事ご苦労様。お茶でも飲んで休んでください』

書類まみれの机にそっと淹れたお茶を置く。右手にはタバコ。いつもの一服タイムだ。仕事が根詰まるといつもこう。

私は十四郎さんの左側に立つ。

「ん?どうした」

ふーとふいて出るのはタバコの煙。その匂いも最初は嫌だったのにいつの間にか安心する匂いに変わってしまっていて。

『左手ならあいてるでしょう?』

そう笑う私の真意をあなたは図れない。そんなあなたにまた笑いかける。

『右手でタバコを吸うなら左手で私の髪を撫でて欲しいのです』

意味を理解した十四郎さんの顔はみるみる赤くなって。

『女にそこまで言わせるなんてカッコ悪いですよ』

「うるっせ」

そう言いながら私の髪を耳にかけて、首裏をそっと引き寄せて私にキスするあなたがたまらなく好きなのだ。

「顔赤ぇな」

『それ十四郎さんが言います!?』

素っ頓狂な声が出て、二人で笑う。


あなたに仕事があるのなんてわかりきってるの。でもやっぱりさみしいから、その空いてる左手だけでも私に貸してほしいんです。

少しでも、一緒にいたいなんてどっちも思ってるはずなのにどっちも言えなくて。そんな二人で過ごす休憩時間はこの上なく幸せなものだった。

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