欠点ばかり(太刀川)
「行ってくるね」
『行ってらっしゃい』
俺の家に何も悪気なしにゴロゴロとあがり込んでるなまえが言った。夜に少し仕事が入ってしまったので俺に付き合ってレポート見てくれてるなまえを置いて家を出た。
今まで付き合ったやつはそんな急に仕事が入ろうものならば泣きついて行かないでとか言ってくるし本当に困った女ばっかだったなぁなんて自分でも笑う。米屋とか出水に話したら涙が出るほど笑われたのも覚えている。
今日のターゲットを倒しに弧月を手にする。
でもなまえもなまえなんだよなぁ…。
今日だって俺のこと見送る前までレポートやってる俺の横でずっとソファで寛いでたし。態度でけぇし。大声でコーラ!じゃねぇし。
いつもそうだ。
生理前はすげぇ機嫌悪いし。
バカの一つ覚えみたいにほぼ毎回料理失敗するし。
学部飲みでめっちゃ吐いてるし。
デート中にヒールで足捻挫するし。
一緒に風呂入ると緊張してたからとか言って足つって溺れかけてるし。
今日は抱きてぇって日によく寝てるし。
本当に欠点ばっかのバカな女。
ネイバーを斬りつけ、仕事は終了。報告は可愛い後輩達におまかせして俺は家に帰る。
そんなバカな女が待ってる家に帰る。
なまえが待っててくれてる。
ああ。お前に会いたくなってきたわ。
急いで帰ろう。
本当に弱点ばかりのお前だけど、それでも俺はお前が好きだから。
ちょっとエロい経済学の先生より好きだから。
うどんより餅よりコロッケより好きだから。
何よりも綺麗で何よりも大切でちっこいお前を守りてぇって思ってるの、お前はわかってんのかねぇ?
家に着いた。鍵を開けて家に入る。
「ただいまー」
リビングまで慌てて行けば、ソファでスマホ握りしめたまま寝ているなまえ。俺の連絡待っててくれてたって期待してもいいだろうか。
「間抜けな寝顔しやがって…」
そっと俺はなまえの頬に唇をおとした。
「好きだ」
こんなことを言ってもお前は聞いてない。
ソファですげぇ間抜けなツラして寝てるからな。
カシャリと響くシャッター音を耳にしたのはそこで起きている太刀川慶だけだった。
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