for ロンリー(スクアーロ)
着信履歴を見る。そこには愛しい恋人の名前が並んでいて合間合間に同僚たちの名前がある。でもそれを見て微笑むことはできなかった。また、喧嘩した。
『スクアーロはさ私がスクアーロを好きなように私のこと好きじゃないでしょ?』
「何言ってんだぁ!愛してるに決まってんだろうがぁ!」
『愛の囁きって怒鳴らないんだよ、スクアーロ』
鼻を啜る音が聞こえる。
『スクアーロはさ、そっちに綺麗なおねえさんたくさんいるんでしょ?わかるよ、私』
私だけだもんね。こんなに執着してるの。
そうなまえは言った。
「俺はお前以外に女なんかいねぇ!」
『でもこんなに会わなくても平気な位の気持ちでしかないんでしょ』
黙ることしかできない。前は月に一度、長くても3ヶ月に一度なまえのもとに行けていたが、もうなまえの顔を見なくなって半年がたっていた。俺がいるのはイタリア。なまえがいるのはジャッポーネ。この距離にいつだって阻まれてきた。会いてぇとか触れてぇとか抱き締めてぇとか色んな欲を満たすことができないのはこの距離が悪いのだ。
「最近忙がしくてなぁ…悪い」
『もうそれは聞きあきたよ』
「でも俺はお前を愛してる。それは本当だぁ」
『そうなんだ。ねぇ、私は何番目の女なの?』
なまえのその問いかけにさすがにキレた。
「俺だってお前が好きなんだぁ!!ただ一人お前をなぁ!」
『もういいよ、スクアーロ。今日はいい。おやすみ』
プツッと耳元で電話の切れる音がする。チィと舌打ちをしてかけなおすが、もう電源を切ってしまったようだ。
携帯を投げてソファに腰掛ける。また今日も一人やけ酒だ。クソボスみてぇに飲んでばかりなんか有り得ねぇと思っていたのになまえ一人でこのザマだぁ。俺だって毎日会いてぇ。触れてぇ。抱き締めてぇ。後先なんて考えずに、ただなまえのことしか考えられない時間が欲しい。でもそんなことは、男のプライド的に言うことはできねぇ。
きっと前みたいに会って俺がなまえを抱き締められたなら、なまえも何も余計なことなんか考えずに済むはずなんだがなぁ。
なまえと飲んだ思い出の酒を一人煽るが、あの時とはうってかわって、随分苦く感じるようになってしまったもんだぁ。
◎阿部真央「for ロンリー」
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