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いえない(ベル)


※歪んでる、流血注意



『ずっとベルに愛されていたいの』

目の前でプロポーズまがいのことを言うなまえ。

「俺王子だし?一人の女にそこまで執着したくねーな」

ししっ、と笑ってもなまえは泣いたり怒ったりなんてしない。

『ベルらしいね』

そう言って笑うのだ。でもこんな返事をした俺でもなまえは特別だ。どうしたら王子の中にずっとなまえはいるだろうか。そんならしくもないことを考えて、思いついたのが、なまえの死だった。なまえは今は俺の女で、俺もちゃんとなまえを愛してるし、なまえも王子を愛してる。そんな奴を失えば、きっと王子の中にずっとなまえは生き続けると思った。まぁ、いつもは奪われるよりも奪う側の人間だから奪われた側の気持ちなんか想像でしかわかんねーけど。

でも、なまえにこのことを言えば、デートの誘いの返事みたいに普通にいいよって言いそうだ。まぁ、なまえが死んで俺の中にずっとなまえがいるのも悪くはねーと思う。だからなまえが死んでも別に仕方ない。

でも逆ならきっとなまえは泣く。俺が前リング戦で危なかったとき誰よりも泣いて誰よりも怒って誰よりも俺の勝ちを喜んでくれたのはなまえだったから。

そんななまえは俺のこの考えを聞いたら歪んでるなんて言うかもしれない。でもこれも俺にとってはただの愛の仕組みなのだ。

今目の前で笑って、泣いて、怒って、いじけて、俺の目の前にいつだっていてくれるなまえに俺は言わないだけでいつだって何かが溢れそうになって、大切なのに愛しているのにすべてめちゃくちゃにしてしまいたくなる。いつか、俺の前からいなくなるなんて、一人の女にそこまで執着したくねーななんて言った俺が言うのは勝手なのかもしれないが、考えたくもない。どこの誰だかわかんねーやつに愛されるのなんて耐えきれない。




『ベル、愛してる』

そう言って俺のナイフでなまえは死んだ。まだ手はいつものようにあたたかい。俺が殺した。ナイフを抜けば、そこから真っ赤な血が流れる。なまえの生きていた証。

何故か俺の目からは涙が溢れていた。


ああ、そうか。

俺もお前の中でずっと生きていたかったのか。

俺もずっとなまえに愛されていたかったのか。


事切れて返事をすることはない、強く抱き締めても何の反応もしないなまえにキスをした。

でも、これでなまえの願いは叶う。俺の中でずっとなまえは生き続けて、俺も事切れるまで俺はなまえしか愛せなくなる。

どうしたらいいのかなんて結局わからなかったけど、とりあえずもう今となってはこの世界になまえはいない。同僚のアイツらが聞いたら悲しむだろう。俺を責めるだろう。それでもこれはなまえと俺の愛の形で、わからないなら別にそれはそれで俺となまえの愛の形なのだからどうでもいい。

スクアーロなら、ずっと愛されていたいと言われてずっと愛してやるって返事をしたかもしれない。ボスも言いはしないかもしれないが、態度で示したかもしれない。でもそれは俺じゃない愛の形だから。

殺されたはずなのに、どこか嬉しそうななまえの顔中に唇を這わした。頬に額に鼻先、瞼。だんだん冷たくなっていく。歪んでると世界全体に否定されようが俺は知らない。だってこれが俺となまえの必死の愛の形だったのだから。



◎RADWIMPS「いえない」



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