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シャツを洗えば(倉持)


鳥が鳴いてるのを聞いた。朝だなーって思うけど、まだまだ起きたくない。布団の中をぬくぬくしていると、ガバッと掛け布団が剥がされた。

「いつまで寝てんだ!」

私の布団を剥がしたのは、隣で寝ていたはずの洋一で。

『えぇ…今日日曜だよぉ……』

洋一は野球部だったし、早起きになれてるかもしれないが、万年帰宅部の私はそんなものと無縁だったのだ。

「いいから早く起きろ!洗濯機まわしてたからな!」

布団を返さず、私のもとから離れていった洋一。ばかやろうと思いながら、私はのそのそと布団から起き上がった。だいたい彼女を起こす彼氏ってこう朝のチューとかじゃないわけェ?

洗濯機がピーッと鳴る。主婦のような手際のよさで洋一が洗濯かごを持ってくる。私も手伝わなきゃなーと顔を洗いに行った。

「オラ、手伝えよ」

『顔洗って着替える』

「いいから手伝え。せっかく晴れてんだ。外に干すぞ」

私は洋一を無視して、洗面台で顔を洗った。タオルで顔を拭いていると手首を掴まれる。

「いいから早く来いよ」

『着替えてない』

「別にお前なんか誰も見てねぇよ」

え、でも私今スウェット…と反論は心の内だけに留めておいた。もうすでに洋一に引っ張られて歩き出していたしまぁたしかにいいか、と思った私もいたからだ。

ベランダに出ると、あたたかい日差しが私を照らす。たしかにこれは洗濯日和だ。

洋一が洗濯物を私に渡して私が大きくバホッと広げて干す。あ、何か新婚さんみたい。そんなこと思ったら顔は素直だったらしく。

「ヒャハハハハハ!何だらしねぇ顔で笑ってんだよ!」

何てやつだ。彼女の幸せそうな顔を見て笑うなんて。

『新婚さんみたいって思っただけなのにー』

洋一はまた大きな声で笑った。

「んな乙女みたいな思考回路なまえに残ってたのかよ」

お前が乙女とか言う方が面白いわ。

『なんかでもこうさー。こんな洗濯日和なら大草原!みたいなところで洗濯したいよね』

「ずいぶんでけぇ夢だな」

洋一が真っ白なシャツを私に渡す。

「俺じゃねぇと叶えてやれなさそうなでっけぇ夢だな」

『叶えてくれるの!?』

「俺しかそんなのまともに聞いてやれるやついねぇだろ」

真っ白なシャツを干す。コンクリートに固められた狭いベランダで。

『まぁでも洋一がいるならいいけどね。こんなとこでも』

ヒャハハと笑う洋一を見て、私も笑った。他のカップルはキスで起きるのかもしれないし、彼女が彼氏の洗濯物をテキパキと洗濯してあげてるのかもしれないけど、これでいいのだ。私と洋一はこのくらい不格好な方が似合ってる。





◎くるりとユーミン「シャツを洗えば」




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