ヒマワリの笑顔 ■1/2
「やあ、ナターリヤ。元気かい?」
俺は世界会議が終わった後、一人で庭をうろついているナターリヤを見つけ声をかけた。
その呼びかけに気づいたのか、彼女は俺のほうを見る。そして次の瞬間には、きれいな顔をこれでもかというほどにゆがめる。
「……貴様に会うまでは元気だった」
しかめっ面でそう言うと、ナターリヤは俺を無視して歩きだした。
俺はそっけない彼女の後を小走りで駆け寄る。
「そうかい。元気ならいいんだよ」
俺が笑ってそう言うと、ナターリヤは歩くスピードを上げた。
「邪魔だ。ついてくるな」
振り向くことなく、そう言い捨てる。
「いいじゃないか。それより、何してたんだい? さっきからずっと庭をうろうろしてたように見えたけど」
「貴様には関係ない」
「失礼だな、ありまくりだよ。なんたってここは俺の庭なんだからな。暗い顔してる子を見かけたら気になるじゃないか」
それを聞いたナターリヤは一瞬止まったが、すぐに歩きだした。
「……私は兄さんを探しているだけだ」
少し遅れて、小さな声が聞こえた。
それを聞いて、今度は俺が止まりそうになった。
彼女は知らないのか。
彼女が待つ兄さんは、すでにここにいないのに。俺の国からも離れているのに。
彼女はいつもイヴァンを追っている。避けられていると、気づいているはずなのに。
それはとても健気で、可哀想に見える。
イヴァンが自分の国に帰ったと分かったら、彼女はすぐにでもアイツを追いかけていくだろう。
でも……。
「なぁ、ナターリヤ」
俺は前を歩く彼女に話しかける。
しかし、彼女はもう何も話さない。
「……ナターリヤ」
俺は手を伸ばし、彼女の手をつかむ。
振り向いた彼女は、鋭い目つきで俺を睨む。
「こっちに来るんだぞ」
俺は彼女の同意を求めずに、彼女を屋敷のほうに引っ張る。
当然抵抗されたけど、かまわずにつれていく。
「貴様、離せっ!」
「嫌なんだぞ。俺は君に話があるんだ。話が終わるまで帰さないさ」
「貴様の話など聞かん。私は兄さんに用があるのだ」
「そうだ。コーラでも飲むかい? なんならお菓子も用意するんだぞ」
「聞け、メタボ!」
俺はぐいぐいと彼女を引っ張り、ついに屋敷の中に入ることができた。
そのまま俺が準備した部屋まで連れていく。
途中、アーサーや菊に会って何か言われたが、無視して進んでいく。
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