イチゴはんぶんこ ■1/2

「つぼみー、今からそっち行っていい?」

 窓の向こうから名前を呼ぶ声が聞こえ、私は顔を動かす。
 見れば向かいの窓からひょっこりと顔を出して、私を呼んでいるえりか。
 何かと思い窓を開ければ、えりかはそんなこと尋ねてきた。

「いいですけど……どうかしたんですか?」

「それはまだ内緒! すぐ行くから待ってて」

 そう告げると、えりかは返事も待たずに窓から引っ込む。
 少しして一階からえりかの元気な声が聞こえる。
 迎えに行こうと腰を上げると、すでに階段を上っている音が聞こえ、ドアまで数歩のところで勝手にドアが開いた。

「やっほー、つぼみ! 大ニュースだよ!」

 えりかはそう言うやいなや、階段を駆け上がってきた勢いで私に抱きつく。
 私はその衝撃を受け止めきれないで、ふらふらと数歩後退してえりかと一緒にベッドに倒れこんだ。

「……んもう、えりか。びっくりしたじゃないですか!」

 私が体を起こしながら怒ると、えりかはごめんごめんと謝りながらすばやく立ちあがった。

「でもね、すっごくいいことがあるの! これ見て」

 えりかは手に持っていたタッパーの青いふたを開けた。
 座ったままの私はそれを覗き込む。

「じゃーん、白イチゴ!」

 タッパーの中には、へたのとってある白いイチゴが三つ入っていた。

「な、なんで白いちごを持っているんですか!?」

 私は驚いて顔を上げる。
 すると目の前には得意げに口角を釣り上げているえりかの顔が。

「もも姉が仕事でもらってきたの。おすそわけ!」

 にこりと笑うと、えりかは私の隣に腰掛ける。

「もしかして、つぼみも初めて?」

「はい、初めてです」

「じゃあ、持ってきて正解だったわけかー」

 嬉しそうにイチゴを一個手に取ると、私の口元にそれを近づけるえりか。



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