あやかしやこう 2






偵察に一緒に付いて行きたいと言った俺を、なにか土産でも買ってくるよい。とまるでガキをあやすようにして飛び立ったマルコが持ち帰ってきたものは、肉でもお菓子でもなく、ぼろぼろの変な男だった。


「エース、土産だよい」

そう何気ない風に言って、甲板にそいつをどさりと置いた。真っ先に駆け寄って、覗き込む。

「うわ、きったねぇ」

血まみれでおまけに泥だらけだ。顔もどんなに汚いんだろうと思ったけど、金色の髪を少しかきあげると俺より浅黒い肌はしているもののそいつは驚くほどに綺麗な面をしていた。

「なぁマルコ、誰だこいつ」
「ヤコウ。拾ってきた」
「は?」


いつもまともな長男が、おかしなことを言っている。しかも全然面白くないやつ。


「雇ってほしいんだとよ。ま、目覚めたらオヤジに判断してもらうよい」


うちに残れるかどうかはこいつ次第だな。とニヤリと笑うマルコ。うーん、悪い顔をしている。


「とりあえず、エース。お前の部屋にでも寝かせてやれ。目覚めたら俺の部屋に連れて来い」
「えっ、ちょっ」


マルコは男を抱き上げると、そのまま俺に押しつけるようにした。慌てて受け取ると、そいつからは血や土の臭いにまじって、ふわりと花のような匂いがした。


「おっ良かったなエース。やっとモビーで念願の弟ができるんじゃねえか?」
「うるせぇ」


ニヤニヤするサッチを尻目に、自分の部屋に足を向ける。そうか、もしかしたら俺の弟になるかもしれないのか。モビーでようやく兄貴らしく振る舞える相手ができるなら、それも悪くないな。なんてちょっと考えてしまった。




部屋のドアを足で開け、自分のベッドにこいつをそっと置く。男は少し唸ったが、どうやらまだ起きる気は無いらしい。ベッド脇に両肘をついて、寝ているのをいいことにじろじろと観察してみる。
抱き上げて思ったけど、身長は俺と同じ位だが体は少し軽かった。でも細っこいくせに筋肉もついてるし、もしかしたらけっこう強いのかも。腰には小太刀が二本指してある。これが武器か、手合わせしてぇなあ。
顔にかかった長い前髪を手で払いのける。うん、やっぱり綺麗な顔。まつ毛も長いし。そう思いながら血や泥でごわごわになった髪を梳くと、不意にその手を掴まれた。細い指は少しひやりとしていて、何故かどきりとしてしまう。
起きたのかな、なんて思ったけど、男は俺の指をぎゅっと握りすやすやと寝息を立てている。子供みてぇだな。小さい頃のルフィと同じことをしていて、思わず笑ってしまう。
そのうち俺の体温がうつったのか、ぽかぽかとしてきた指先に少し安心した。




…しかし、どうして、寝ている奴の隣にいるとこっちまで眠くなるんだろう。まあ、今日の仕事は済ませたし、少しくらいならいいか。と男に手を握られたまま、俺もベッドに顔を伏せた。


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