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ぐったり。
この言葉に今の私はぴったりだと思う。
任務から帰ってきて、いろんなものの威圧に耐えられなかった私は、そのまま熱をだしてしまった。
久しぶりに出した。39℃とか。
すごく寝たいのに、体の寒さとは正反対に熱い顔とひどい頭痛に眠ることができない。
目をつむると、あの鋭い眼光がフラッシュバックしてくるのだ。
…相当、怖かったんだと、実感する。
…四皇こわい
心の中でつぶやいて布団に潜り込むと、ノックの音がして、びくりとしながらも小さく返事をする。
「やっほ〜」と現れたのは、青雉さんで。
正直ほっとしてしまった。
「…青雉さん」
「ひどい顔色。熱は?」
「…39.3℃です」
「あらら…」
そりゃ大変だ、とベッドの隣にデスクチェアを引き寄せて腰を掛ける。デスクにはお見舞い、と何かを置いてくれた。
「何ですか?」
「治ったら開けて」
「…気になる」
「今は寝ないとだめでしょ?」
今日は青雉さんがとても大人っぽく見えた。
いや、大人なんだけど…
いつもより優しく微笑む彼に、心が安心していく。(赤髪と正反対の色をまとっていることも、その要因かもしれないが)
青雉さんのひんやりとした手が私の額に触れる。そのまま指で輪郭をなぞりながら頬をすりすりとさすられる。冷たくて、とても心地いい。
「おやすみ、ニナちゃん」
低く優しい声色も、今の私には眠気を誘うもので。
両方の心地よさを感じながら、眠りに落ちていった。
「…まったく」
規則正しい寝息を立てているおてんば娘を見つめる。
体調が悪いのに眠れていないのが分かる顔色と隈。
その原因になっているのは赤髪のシャンクス。任務先で赤髪に連れまわされていたということは、彼女の部下から報告は受けていて知っていた。
が、それなりに鍛えられた彼女がここまで弱るということは、ただ連れまわされただけではないということが容易に想像できた。
(きっとニナちゃんに問い詰めたところで、”何でもない”というだろうし)
先ほどいろんな奴らから預かった見舞いの品を置いたデスクに、紙切れと小箱が置かれていることにも気づいていた。
それをペラとめくると、赤髪の副船長の名前。
小箱には、確かに彼女が好みそうな簪が入れられていて。
何とも腸が煮えくり返りそうな思いを押し込める。
本当なら、こんなもの凍らせて粉々に砕いてやりたい。
だけど、それをして悲しむのは、どうしたって彼女だから。
溜息をつきながら小箱のふたを閉めて、見なかったことにする。彼女がこれをつけようと、知らないふりをするのが俺の役目。できるのなら俺だって、この子を手の内に収めておきたい。俺のそばから離れないように任務をいじってやるし、階級だって変えられる。
………ただ、それをして喜ぶニナちゃんではないこともわかっている。
『私たちは、本当に…正義なのですか…っ』
俺のもとで悔しさをにじませながら涙を流す彼女の記憶。その美しさに俺は心を奪われた。
ニナちゃんは、かわいい。
ちょっと抜けていて、危機管理能力が足りないこともあるけれど、一生懸命で誰よりもまっすぐだ。お菓子が好きなところも、誰にでも笑顔を振りまいてしまうところも。
ただ、俺しか知らないニナちゃんは、もっと魅力的だ。
武器の手入れを欠かさないこと。
もらったものを大切にすること。
小動物がすきなこと。
実は食い意地がはっていること。
…海賊か俺達か、どちらが正義かわからなくなってしまっていること。それに困惑して、動揺して、苦しんでいること。
きっと、俺しか知らないニナちゃんで。
俺はどんどんこの子に惹かれてしまっているんだと、実感する日々。…それが、見事に一部の海賊たちやら同僚たちも同じであることも分かっている。
「…だから、渡したくないんだけど」
彼女の顔の隣に手を置くと、ぎい、とベッドが軋む。
意気地なしだと思いながら、寝息を立てる彼女の小さな唇に、自分のそれを重ねる。
熱くなってしまっているニナちゃんの体温を直接感じながら、疼く欲を理性で押さえつけた。
息も止まるくらいに君が、愛しい
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