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  listen.


けほ、と乾いた咳ひとつ。
それが白く見えてしまうのは幻覚だけれど、そう見えてしまうくらいには、ボーッとしいるのは事実。この島であまり炊くことの無い暖炉がパチパチと音を立てて部屋を温めているはずなのに、体はかたかたと寒さで震える。布団を思い切りかぶって体を温めようと必死。
…ここまで風邪をひいたのは、…海兵時代、シャンクスに脅された後以来かもしれない。平穏な生活の中で、あまり体調を崩さずにきたし、崩すきっかけもなかったと思うんだけれど……。
ピピ、と体温計が音を出して検温完了を知らせる。数字を見て思わずため息がでた。中々の熱だ。

「…熱は」
「………38.8℃」

気を使ってくれてか、静かに部屋に入ってきたローにかすれ声で体温を知らせると、彼の冷たい手が頬に触れた。気持ちいい。タオルをぎゅうと水で絞って額に乗せられる。気持ちいい。

「俺がいるタイミングでよかったな」

口角を上げて私を見下ろすロー。いつもの私なら、減らず口を叩いているのかもしれないけれど…そんな余裕はないし、事実、私自身もそう思っているから、「そうね」と返事をする。ローは調子が狂うとでも言うように頭を掻いて、ベッドの隣に椅子を引きよせて腰を下ろした。

「点滴でも打つか」
「…そこまで?」
「いや」
「ふふ、心配しすぎ」
「笑えてねェぞ」

確かに、力があまり入らなくて笑いきれてないのかましれない。けど、私を見下ろすローが、あまりに弱々しく見えてちょっとおかしい。

「ったく…少し寝ろ」
「……うん」

ローの冷たい手が頬や頭を優しく撫でてくれる。いつもより私を甘やかすようなその優しい掌に、心がほっと落ち着くのが分かる。暫くして、そのまま私は眠りに落ちていった。








かすかに感じた美味しそうな香りに、パチパチと瞬きを繰り返す。ようやく目の前がはっきりしだした頃、体が少し楽になったことを実感する。体温は…まだ下がりきってないようだ。

「起きてたのか」
「ん、今ちょうど。…どうしたの?」

なんだか少し浮かない顔のローがドアを開けて入ってきて、首を傾げた。そして、その手には鍋つかみが装着されていて、鍋を持っているという意外な姿に驚いた。彼が付けているのは初めて見た気がする。(…しかし、似合ってはない)

「…コックに、作ってやったらどうだとメモを押し付けられたから」
「ローが、作ってくれたの?」
「………チッ」

私の言葉にそっぽを向いたローだけど、かすかに見える耳が赤くなっていて、キュンと心臓を掴まれた気分だ。食べる、と体を起こす。
サイドテーブルに鍋を置いて、居づらそうは顔をしながらローは腰を下ろす。鍋を開けて見ると、ほか、と湯気が上がって、お米と卵のいい香りに包まれた。

「美味しそう」
「…腹壊すかもしれねェぞ」
「どんなお粥よ」

ただ座っているローをじ、と見つめる。何だと眉間に皺を寄せる。今日は随分と甘やかしてくれているのをいいことに、私は「食べさせて」と我儘を言ってみることにした。ローは最初、なんとも機嫌を損ねた顔をしていたけれど、軽く咳き込んだ私を見て、ため息を付きながらお粥をレンゲにすくい始めた。

「…ほら」
「あー、ん」
「……ったく」
「………へへ、おいし」

ローが作ってくれたから、尚更。
今ペンギンたちに私の顔を見られたら、「デレデレかよ」って確実に突っ込まれるだろうと自分で想像できる。だってだって、ローがとにかく優しい。私が一口を飲み込み終わるのを待って、次を差し出してくれるくらい。余程私がニヤニヤしていたのか、ローが私の頭を小突いて「デレデレすんな」って怒られる。(本人に言われてしまった)

「ロー、ありがとう」
「あァ」

ローの頬にちゅとキスを落とすと、ローは今日1番のため息をして私の肩をベッドに押し倒す。

「治ったら覚悟しとけよ、ニナ」

ギラ、と金色の瞳が獲物を捕らえるかのように私を見下ろしていて、ゾク、と背筋が凍った。それを誤魔化すかのようにへらりと笑うと、1番悪い顔で笑い返したきたロー。額に唇を寄せてきて、低く「おやすみ」と囁いた。…もしかしたら、治らない方が身を守れるかもしれない。









listen.










よく覚えとけ



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キリ番リクエスト
「ローに甘やかされる」夢でした。
お医者さんに面倒見て欲しいんです。きっと苦手だろうことにも頑張っちゃうくらい。(今回でいう料理)
風邪引いた+ローが優しいっていう条件だけだ、夢主がいつもより倍デレるから戸惑ってほしいという願望が込められた文になりました笑
それにしても、甘系は難しい…
ちゃんとリクエストに添えているか心配ですが…
リクエストありがとうございました!

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