だって簡単に人間は壊れてしまうから。というか俺はたくさんの人間を壊してきたから。その柔らかい肌に触れるなんて到底無理だった。もし、壊してしまったなら、俺は俺を殺さない自信が無かった。
「平和島静雄」
「………」
波江さんの少しハスキーな声が俺を呼んだ。それだけでこんなに嬉しいのに俺はそれを態度で示せない。あの人にそれを返してやれない。部屋の隅、壁に背をあてている俺とベットの端っこに座っている波江さんの距離はなぜだかひどく遠い。俺はいつだって触れたくてうずうずしてるのに。
(俺には無理だ)
標識もガードレールも街灯もあんな簡単に壊れてしまうのに。俺にとっちゃ波江さんの骨なんてクラゲと一緒だろう。昔みたいにめちゃくちゃにしちまったら取り返しがつかない。あの時は怪我で済んだけど今回は違うかもしれない。
「平和島静雄」
「……」
「ねえ、聞いているの?」
「は、い…?」
うわっ、
思わず波江さんの顔を見て声を上げてしまった。波江さんは眉を寄せて不機嫌そうな顔をしている。いつの間にここまで来てたんだろう。波江さんの白い指がつ、と俺の顔に触る。
「…な、みえ…さん。」
「なに」
「俺、怖…」
「怖いとか言わないでね」
「…え?」
「触れるのが怖いとか、やめて頂戴」
波江さんの指が俺の唇に触れ、次に波江さんの唇が触れた。しばらく間があって俺の息は詰まる。心臓は早くなる。
「波江さ…」
「私は怖くないわ、あなたみたいな怪物」
だから、触れて。
頭の中が白くなって俺はそうっとガラス細工みたいな彼女に手を伸ばした。触れた波江さんは案外丈夫でびくともしなかった。
(ガラス張りの白む朝)
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静波ktkr\(^O^)/
やっぱり静波は美味しいですねー!
リアル美女と野獣ですもんね萌え。