前篇

「ねぇ。少し、話しをしないかい?」
「…案外、暇人なのか?」
「そういうわけじゃない。お前とだから、僕は話したいと思うのかもしれないね」
おどけたように肩をすくめて言う槙島に、狡噛は人間らしさを感じた。
いや、別に槙島のことを人外だと思っていたわけではない。
しかし、どこかで、彼を人間味の欠けたような人間だと思っていたのかもしれない。
サイコパス色相が常に白の特異体質―俗に、免罪体質というらしい―、という点においては、この社会において、人間離れしているのかもしれないが。
「おかしな話だと思うかい?敵同士なのに、こうして会話を交わす関係は」
「会話だけじゃないだろ、交わすものは」
皮肉交じりにそう吐き捨て、狡噛は煙草に火をつけた。
クスリ、と笑って、槙島は何かをボソリと呟いた。
「…何だ?」
「煙草。好きじゃない、って言ったんだよ」
「俺も昔は好きじゃなかったがな」
「へぇ、じゃあ好きになるようななにかがお前にあったわけだ。その、数年の間に」
槙島の、含みを孕んだ言い方に若干の苛立ちを感じた。
知っているだろう、と言いたくなった。

→続く

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