06


任務から帰ってきたら当り前に用意されているご飯に自然と頬が緩む。以前だったら一楽に直行する俺が寄り道もせず直帰するようになったのは言うまでもなくクシナがいてるから。
寝ているのか気配はするが電機はついていないリビング。電気をつけると椅子に座り机にもたれ掛っているのは、待っている間に寝てしまったクシナ。こうよく見れば尾獣化の修行で会った母ちゃんよりも幾分か若いクシナ。俺はクシナが来てから幸せだ。家に帰ればこうしてクシナがいてくれる。帰りを待っていてくれるということは本当に嬉しい。ただ、クシナはどうなんだろうかとふと考える。忍びない世界から来たクシナにとって平和になったとはいえこの世界はもしかして…否、もしかしなくても過酷なものに違いない。

そっと抱き上げたクシナは想像以上に軽く、少しでも力を入れてしまえば壊れてしまうのではと思うほどだった。起こさないように寝室に向かいベッドに寝かす。規則正しい寝息に安堵して布団を掛ける。

「み、…なと……」

「!」

寝言なのか直ぐにまた寝息を立てるクシナ。クシナの寝言の“ミナト”とは向こうの世界のミナトであって父ちゃんのことではない。眉を寄せ悲しそうな表情のクシナが月光に照らさせる。俺は、腹をぎゅっと握られたかのようなやりきれない思いを無視し、寝室を後にした。
リビングに戻り栄養を考えてくれているであろう色とりどりのおかずに感謝して手を合わす。優しい味付けのおかずを一口一口噛みしめて咀嚼する。


(クシナは母ちゃんじゃない)
(でも、今だけ……は、)