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夕食も豪華だった。宴会場と呼ばれる広い畳しきの部屋に集まった私たちの目の前に用意されたものは新鮮な海の幸を中心としたもの。サッカー部員の皆さんは凄まじい勢いで各自のお皿の上を空けていく。



「どうしたのクシナ?もしかして生物だめだった?」

「違う…」

「でも、さっきから一口も食べてないよ?」



隣で食事していたミナトが箸を止め、私の方を向く。ミナトのお皿も半分以上はスッキリとした状態になっていた。



「えっと、私…こんな賑やかにご飯食べたことないから、」

「静かにさせようか?」



ミナトの言葉に目を丸くする。最近、だんだんとミナトのキャラが黒くなっている気がしてならない。それに、今日の食事は自来也先生が全国を戦う皆さんのためにご馳走しているみたいだし。私は決して食べれない訳じゃなくて初めての状態に少しテンパってるだけ…あれ?意味分かんないじゃん。


「違っ、………ミナト、たぶん私幸せなんだよ!」

「え?」

「だからね、少しずつミナトの隣でこの幸せさをいっぱい体験したいな!」

「///、ん…俺もクシナを幸せにしたいから、」



顔を真っ赤にさせながらそう言うミナトの顔は一瞬だった。



「………先生、先輩、お前ら」



漫画なら"ゴゴォォォォ"という効果音が付きそうなミナトにサッカー部の皆さんはたじたじ。しかし、そんなミナトに屈しない強者が一人。



「しかし、ミナトもやるのぉ!皆の前でイチャつくお主たちが悪いしのぉ。それに、ほれ…顔を真っ赤にさせたクシナを一人にしてはいかんのぉ」

「っ、クシナ!!」

「は、はい!」



自来也先生に言われながら肩をふるふると震わせたと思った瞬間。ミナトが急に私の名前を呼ぶもんだからびっくりしちゃった。



「行くよクシナ、食事は部屋で摂ろう!」

「え、ちょっ!ミナト!!」



私の手を引くミナトは耳まで真っ赤に染まっていた。後ろの宴会場からはサッカー部の応援歌が何故か聞こえていた。(明日の試合の為かな?)