黄色い声援が飛び交うグラウンド。たかが部活の練習にしては凄い熱気だ。その声援は殆ど全て女子たちがミナトに送っているもの。ミナトの彼女である私としてはこの上なく気分が悪い。ミナトもミナトで困ったようだけど笑っちゃって満更でもなさそうだし!あ、手も振り返してる!
「ミナトー!」
「あ!!クシナ!」
私が叫んだら笑顔で答えてくれるミナト。うん、他の女の子と同じ反応だ。(名前呼んでくれたけど、)
「ミナトなんか転けちゃえっ!」
「え、…っうわ!」
途端、回ってきたボールに足が絡まり盛大に転んだミナト。私といえば周りの女子たちの大ブーイングを受け。ミナトは声援、労りの言葉を受けている。
「ちょっと!あんたが馬鹿なこと言うからミナト君転けたじゃない!」
「そーよ!もうすぐ大切な地区予選なのに怪我でもしたらどーするつもり?」
隣にいた女子グループの子が私の胸ぐらを掴み上げ啖呵切ってきた。それに便乗して周りの女子たちも群がってきて私を囲み始めた。
「ちょっ、」
「別に可愛くもないブスのくせにミナト君のまわりにいて、あんたうざいのよ!」
「ミナト君はね、優しいからあんたを構ってやってるだけなの!調子に乗ってんじゃないわよ!」
そう言い右手を振り上げる(仮)Aさん。私は次に来る痛みに耐えるためぎゅっと目を閉じる。
ぱしっ
「え、」
来るはずの痛みはなく、音だけが妙に響く。
「ミナト!」
私の代わりにミナトが平手打ちを受けていた。
「…クシナになにしてんの?手まであげて………俺、怒るよ?……もう、遅いけど、」
以前聞いたミナトの怒った時の声。ミナトの背中に何か黒いものが見える気がする。
「ミ、ナト君……私たちは、その……」
「失せて?…俺、殴るかもしれないから…君たちのこと」
途端、去って行った女子たち。ミナト…何かキャラ違うくない?
「大丈夫?クシナ」
「う、ん…それより」
ミナトの左頬が赤く腫れてしまっている。私のせい、
「クス、まったくクシナは見てて飽きないよ」
「へ?」
「このぐらい大丈夫!クシナが無事でよかった、」
にかっ、と効果音が付きそうなミナトの笑顔にクラクラする。あー、こりゃ惚れ直しちゃうわ!
「で、さっきの声援はヤキモチなんでしょ?嬉しいな♪」
「〜〜〜///」