22 イリーナ先生の時間



「え、イリーナ先生20歳なの?」

「あぁ、修学旅行の時なまえ、あんたいなかったんだっけ」


とある日の昼休憩。私は一人で廊下から雨に濡れるグランドと木々を見ていた。ちょっとセンチメンタルになる梅雨の季節。そんなセンチメンタルな雰囲気をぶち壊すイリーナ先生が現れた。廊下で立ち話を始めればなんと、イリーナ先生は20とか!!え、私より若いの!!


「そう言うあんたは中学生には見えないわよね」

「え、あはは…やだなー中学生だよ、」

「普通の女子中学生は、あのタコ見れば叫ぶか…なんか反応見せるけど、あんたはそんなに驚かなかったんでしょ」

「……吃驚すると声が出なくなるタイプなので、」


自分の身にタコ生物に出逢うよりも驚愕事件が起こっているなんて話せないよ。私だって殺せんせーを見て驚いたし、普通の時の私が見れば吃驚して叫んだりもしていただろうけど、その前に自分自身が中学生になるっていう驚愕事件に襲われたのだから。


「ま、いーわ」

「?」


イリーナ先生は綺麗だ。大きな瞳に長い睫、豊満な胸に女性らしいくびれ。その立ち振る舞い仕草が同性の私から見ても羨ましく綺麗に写る。


「あんた、それより私に隠し事してない?」


どきり、
私の心臓が脈を打つ。バレた?いや、私はちゃんと中学生を出来ている筈だ。ちょっと大人しい中学生。落ち着いている中学生。子供らしさは年相応に見逃してほしいが、それでも見た目はしっかりと中学生だし……


「あんた急に色気出てない?」

「は?」

「ほら、唇だってリップし始めたでしょ?髪だって…前のなまえはもっと無頓着だったじゃない」

「……」


貶されているのだろうか?それとも褒められている?…な、訳はないか。
それにしてもリップし始めたのはよく気づいたねビッチ先生。流石、色仕掛けの達人。


「えっと、イ、イリーナ先生?」

「ほら!話しちゃいなさいよー!!」

「え、あの…ち近い、」


後ろには壁、目の前にはイリーナ先生。左右はイリーナ先生の長くしなやかな腕で塞がられている。これは俗に言う壁ドン?……憧れはちょっとはあったよ。ちょっとは…でも、イリーナ先生の壁ドンは求めてないー!!!てか、同性もオッケーとか本当にビッチだ!!!


「ほら、白状しないと……」


もうだめ……


「何するのよ!」

「なーに ビッチ先生、生徒襲ってんのー?」

「カルマ君!」


私とイリーナ先生の間にはカルマ君の教科書。その隙に、油断したイリーナ先生から私は急いで逃げる。あ、危なかった。あともう少しカルマ君が遅かったら……



(ふーん そーゆこと♪)

(何キスされそうになってんの?)
(え、だって 逃げれなくて)
(……もう、気をつけてよね)