20 赤羽カルマの時間
「お兄さん等何してんの?」
聞きなれた声に振り向くと帰ったはずのカルマ君がそこにいた。カルマ君は怒りを露わにしてゆっくりとこっちに近づいてくる。カルマ君の殺気に本校舎の生徒はわらわらと散っていく。
「その子連れなんだ……その汚ねー手離してくんない?」
「あ゛ぁ゛?テメー死にたいのか?」
途端、逆上した不良が私の手を放し私は自由の身になる。不良はカルマ君に近づき威嚇する。
「死ぬ?…ふっ、安っぽい殺気だね……」
ドガッ!!
「口よりさー手を出さなきゃ……なまえちゃん、ごめんね。目と耳、少しの間だけ閉じててくれる?」
私は怖くってカルマ君に言われた通り目と耳を両手を使って閉じる。耳の隙間からは鈍い音が聞こえてくる。怖くて怖くて私は必死に小さくなることしか出来なかった。
◇◇◇
「ん、――ちゃん」
「っ」
「なまえちゃん」
「カ、カルマくん」
「移動しよっか」
カルマ君の声に呼ばれてそっと目を開けると目の前にはカルマ君しか見えなかった。たぶん、カルマ君の背には倒れている不良たちがいるんだろうけどそれらを私に見せ無いようにしてくれているんだろうと思う。カルマ君といえば、少し制服が汚れてしまっているが大きな怪我はなさそうである。それに私はほっとする。
「ありがとう……カルマ君」
「無事でよかったよ」
「帰ったんじゃ…待っててくれての……?」
「なんとなくね。あんまり遅いから気になってなまえちゃんを探していたんだ」
何となくでピンチに駆けつけるとか…
「次は絶対守るって言ったでしょ」
「!」
「次なんて来てほしくなかったけど、」って言いながらカルマ君は困ったように笑う。そして、私をそっとそっと優しく抱きしめる。
「カ、カカカカルマくん!!!」
「もームードないなー」
なんて、笑うカルマ君。ムードなんて中学生に作らせるもんか。いや、もともと色気とかこういう甘い雰囲気に慣れていないだけど、
「守れてよかった」
「カルマ君、ありがとう。本当にありがとう…もう、ダメかと思ったの…そしたら、カルマ君が来てくれた。本当に本当、にあ あり、ありがと……」
私の瞳からは安心したからなのか止まりそうにない涙が溢れてきた。カルマ君への気持ちは嗚咽混じりにだがしっかりと伝えたくて途切れ途切れに必死に言葉にする。
「……あーヤバ、」
(もう一回、抱きしめて…いい?)
(え、あ…ちょ、)