16 好奇心の時間



1人で旅館内を探索中。年期のはいったここの旅館の廊下は歩く度にギシギシと鳴る。すると男子風呂で集まっている子たちがいた。声を掛けると覗きをするのだという。


「覗き?!」

「覗きィ?それ男子の仕事だろ?」


男子の裸体を見たってなにも嬉しいことなんてない。寧ろペナルティーだ。取り敢えず岡島君を一発殴っておいた。


「アレを見てもそれが言える?」


暖簾を上げると脱衣所にはきちんと畳まれた殺せんせーの衣服。ネクタイも皺が出来ないようにくるくると巻かれている。殺せんせーはかなり几帳面らしい。


「あの服がかけてあって服の主は風呂場にいる。言いたいことわかるよね?今なら見れるわ 殺せんせーの服の中身」


中村さんのハンドサインで殺せんせーの入浴を覗く為、風呂場に近づく。岡島君は「色気ない」とかなんとか言ってたけどじっと見つめると黙った。
みんなが息を呑み緊張の面持ちで扉を開ける。


「「女子か!!」」


お風呂場は泡だらけだった。殺せんせーは濃い泡風呂に全身を浸かっていた。湯船から出ているのは頭と触手2本。あまりの光景にみんなの殺る気は削がれてしまう。というか、


「殺せんせーというか、入浴剤禁止なんじゃないの?」

「これ先生の粘液です。泡立ちの良い上にミクロの汚れも浮かせて落とすんです」


何でもありの本当に便利な体である。


「……フフフ。でも、甘いわ。出口は私達がふさいでいる浴槽から出る時必ず私達の前を通るよね。殺すことはできなくても裸ぐらいは見せてもらうわ」

「そうはいきません」


すると、殺せんせーは濁り湯を身に纏い背後の小さな窓から逃げてしまった。


「中村…この覗き空しいぞ」



◇◇◇



結局、殺せんせーの秘密なんかは何も見れなかったけど長いこと風呂場にいたせいで湯あたりをしてしまった。のでコーヒー牛乳を飲むために休憩コーナーの自動販売機にてコーヒー牛乳を購入。
そして、視線を感じて振り向けばカルマ君がいた。


「カルマ君」

「あれ?コーヒー飲めないんじゃないの?」

「このビンのコーヒー牛乳は特別!美味しいもん!」


「ふーん」なんて興味の無いような返事一つ。カルマ君はレモン煮オレを購入して私の隣に座る。当り前だけどカルマ君は浴衣なわけで妙に見えてしまう胸元が色っぽい……って私は変態か!!!


「ん?どーしたの?」

「い、いや…よくその煮オレシリーズ飲んでるなぁって」

「あ、これ?このシリーズ俺好きなんだ。飲む?」

「え、あ…ありがとう」


流れで受け取ってしまったがこれは間接キスになるのではないか?いやもうそんな関節キスがどうのこうのいう歳でもないんだけど、中学生の時ってほら気にしなかった?あれ?違う???
少し悩んだが受け取ってしまった為、飲まないわけにもいかずそっと飲んでみる。


「あっまー」

「あはは、この甘ったるいのがクセになるんだよ」


想像以上の甘さだった。成程、カルマ君ほどの頭の回転には糖分があれだけ必要だということか……そう言うことにしておこう。
それからはいつも通り他愛無いことを話した。昼間の事件でギクシャクしてしまうかと思っていたけど、いつも通りのカルマ君に安心する。少しだけカルマ君を避けてしまっていた自分が恥ずかしい。


「もう終わっちゃうね」

「なんかいつも通りな気もするけどね」


男子と女子の叫び声が聞こえる。暗殺でもしているのだろうか。
コーヒー牛乳を一口飲む。レモン煮オレの後なので少しだけ苦く感じる。カルマ君の方を見ればカルマ君もレモン煮オレを飲んでいた。…あ、間接キス



(色々あったけど楽しかったね)
(そだねー)