憧れの世界 03


「ッチ、殺る気失せたわ」


クナイを引き、私から降りるナルト。クナイをひと回しして右足にあるホルダーにしまう。その動きは慣れていて滑らかだった。ナルトは溜息一つして振り返り何かの袋を私の足元に投げた。


「ほれ!じいちゃんから」


ぱんぱんに膨らんだ袋は凄く重たくて中身を確認すると価値は分からないけど大金であろうお金が詰まっていた。“両”だっけ?


「じいちゃんから。生活用品買ってこいだと、」

「え、いいの?」

「いーんじゃね?つーか、それ返してなまえ金あるの?」

「…ない」


そうだった。私、この世界のこと知っているつもりだけど全然知らないんだ。「出かけるぞ」というナルトは青年に変化した。


◇◇◇


生活用品やその他要るものを買うために商店街に来たナルトと私。木の葉の里の商店街は賑やかで活気に溢れていた。それにしてもと青年に変化したナルトを見上げる。どう考えたって青年と少女じゃ周囲の主婦たちから浮いて仕方ない。


「何で変化してしかも、大人なの?」

「馬鹿。この時間にナルトがうろちょろしてたら可笑しいだろ」

「…今も可笑しいよ」

「あ"?」

「…なんでもありませーん、」


直ぐ怒るナルト。でも、確かに真昼間にナルトが商店街にいれば可笑しいかも。この時間はアカデミーに行っているはずだもんね。アカデミーのことを尋ねると「影分身」との返答。成程、便利だね。

談笑しながらも買い物は進み、洋服、下着、歯ブラシとかその他諸々を購入。あと、これから必要だと思ったフライパンや鍋、食器類。だって、ナルトの部屋カップ麺ばっかりなんだもん。かさ張るものが多いけど必要最低限に抑えたつもりでも一式を揃えるとなるとかなりの量になるわけでナルトも私も両手に沢山の袋を抱えていた。自分の物だけど…すごく重たい。


「う、ちょっと休憩しない?」

「ん、あぁ…疲れたのか?」

「ナルトは疲れてないの?」

「鍛え方が違う」

「…そ」


休憩にと選んだのは団子屋さん。原作でも登場した団子屋にテンションは上がる上がる。重たい荷物を端に置いて、おばちゃんにみたらし団子と三食団子、お勧めの木の葉団子を注文する。


「よく食うな」

「美味しいよ」


小ぶりな団子はいくらでも食べれる。風味というかこのもちもち触感がなんとも言えないくらい美味しい。ナルトは日替わり団子だけ。うん、それも美味しそう。
そんな、和やかな雰囲気を壊す会話が、


「ほら、昨日の騒ぎ例のあの子みたいよ」

「嫌ね、あんな子が同じ里にいると思うと怖いわ。ほらだって、」

「!そこから先は禁句よ」


主婦の雑談。それにしては随分邪険な雰囲気で、事を知っている私は苛立ち。段々と早くなる鼓動と呼吸。


「ちょっと!!!!」

「「!」」

「おい??!」

「おばさん達今っ!」


そこで塞がれた口。もがもがするけど抑えられたナルトの力は強くてびくともしない。何で?なんで、止めるのナルト、
「何でもない」と、おばさん達に話したナルト。そのまま団子屋の勘定を済ませて帰宅した。帰宅した途端、ナルトは変化を解き私をぶん殴った。…たぶん、本気じゃないんだろうけど

「馬鹿、なんであんなことした!!俺たちのこと知ってるなら、これのことも知っているんだろう」と、ナルトが示す腹。それを意味するのは九尾だと容易に想像できる。知っている。九尾を封印されたこともその為に、重たすぎる宿命を背負っていることも。
でも、


「ナルトは里の英雄じゃん!なんで、」

「は?」

「それはナルトが里を守った証しでしょ?それなのに、あんな酷いこと。大人なんていつも勝手よ!」

「英雄、ククっ」

「ナルト?」

「おもしれー。そんな事考えたこともなかった」


頭を擡げて笑うナルト。その横顔は笑っているのに泣きそうで、


(ナルト?)
(変なやつ)


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