大量のマヨネーズの苦労
--------------------------------
「すみません…マヨネーズ50本お願いします」
いつもは10数本のマヨネーズの買い出し。今日は誰かさんの悪戯のお蔭で大量に買い出ししなければならない。正直帰りたい。
ほら、店員さんもどことなく気まずそうだし、主婦の皆様は目を合わさないように必死、子供たちに限っては素直に「何アレー」「酸っぱいー」「あんなにマヨネーズ買うの?」等々素直な質問を自身の親に投げかけて「見ちゃいけません」なんて言われている。
「はい、マヨネーズ50本ね」
「ありがとうございます」
「…買ってくれるのは有難いんだけどね。他のお客さんもいてるからもう少し小まめに買いに来てくれるかい?」
「はい、すみません」
当り前である。マヨネーズ50本も買えるのはこのスーパーだけ真選組の御用達の店であるためおのずとマヨネーズの需要がある人物によってなされているからである。
◇◇◇
「う、重い」
マヨネーズ25本ずつ入ったレジ袋は今にも重みで破けてしまいそうな状態である。普段の買い出しよりも絶対に労力がいるため女の子に優しくすることが主義である私はこの役を買って出ている。でも、今日の重さはちょっと挫けそう。
「なまえちゃんじゃないの」
「あ、坂田さん。こんにちわ」
「…それ、大串君の?」
「坂田さん、土方さんです」
「わーってら」とガシガシと頭を掻きながら欠伸をする坂田さん。すると、手を差し出された。
「ん?」
「ん?じゃねーよ。こんな重いもん女の子に持たせられないでしょ」
「え、あの。悪いですよ。あと少しで着きますし大丈夫です」
「そうでさァ、みょうじなら出来る!やればできる子だー」
背後から知っている声に振り向くと飴ちゃんを咥えた沖田さんがいた。アイマスクが頭にあるということは先程まで休憩して(サボって)いたということ。
「総一郎君相変わらずのSだね…そんなんじゃ彼女できねーよ?」
「総悟でさァ。それに、旦那に心配してもらわなくても間に合ってまさァ。」
話出したドSコンビ。指の感覚がなくなってきてそろそろ腕の限界が近づいている。失礼だが仕方ない。
「あの、私はこれで失礼しますね」
「待ちなせェ」
「はい?」
お辞儀をして歩き出した足を止めて振り返ると、がさごそとレジ袋を漁る沖田さん。そして、マヨネーズ一本を持ち真選組屯所への道を歩き出した。
「旦那ァ、それじゃ」
「あ、沖田さん待ってください!、坂田さん失礼します。」
「お、おう…何?あの子たち」
坂田さんの最後の呟きは聞かずに、49本のマヨネーズ両手に頑張って小走りに沖田さんに追いかける。ゆっくりと歩いていた沖田さんには直ぐに追いついた。
「えっと、ありがとうございます?」
「何で疑問形なんでィ」
そう言いながら沖田さんは私の持っているマヨネーズが25本入っている方のレジ袋を持つ。
「え、すみません」
「勘違いすんじゃねィやィ。これに今度はわさびぶち込んでやるんでィ」
「!、やめてください。また、マヨネーズ買い出し行かないといけなくなるじゃないですか」
「それはがみょうじの仕事だろィ?」
「…違います」
夕飯時、土方さんが叫んだのは言うまでもない。
(総悟ぉぉぉぉおおおー!!!)