寒いだけなら雪もどうぞ

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「今年はよく降りますね」


そう言いながら近藤さんと中庭に降り積もった雪を眺める。先日の風邪のこともあり今日はこうやってゆっくりと過ごさせてもらっている。こんな寒い日の炬燵と温かいお茶は最強だと思う。
軽く10pは積もっているであろう雪は業者に頼んで玄関と重要箇所は除雪してもらっている。


「江戸にこんな雪が降るなんざ本当にめずらしいな。寒くないか?なまえちゃん」

「はい!お陰さまで風邪も治ってぬくぬく過ごさせてもらってます」


こうやって近藤さんと穏やかな時間は落ち着く。真選組のお父さん的存在の近藤さん。ストーカーを辞めれば良いお父さんになると思うんだけどな、という言葉は言っても意味がないのでやめておこう。



◇◇◇



「で、これはどういう状況ですか?」


ここは所変わって中庭にある練習場。今は雪の積もった真っ白な広場。ここにいる経緯を簡単に説明するとこうだ。
近藤さんとお茶をしているところにサボっていたことがバレた沖田さんとそれを追いかける土方さんが乱入してきて刀やバズーカを取り出すような乱闘になった。それはいけないと近藤さん、その決着を雪合戦で決めることになった。……なんで?しかも、チームは正式なじゃんけんの元、土方さん私ペアと沖田さん近藤さんペア。


「あの……私、一応病み上がりで休みを頂いている身なんですけど、」

「休みなら問題ありやせんよ」

「総悟おめーは勤務中にサボってるの大問題だからな!!!」

「まぁまぁ」


私の弁明は聞き入れられることなく(期待もしていなかったけど)雪合戦の準備である雪玉作りが始まる。地味な作業だな…山崎さん呼んでこようかな?


「でれじゃあ、はじめやしょーか」


土方さん私チームと沖田さん近藤さんチームは見つめ合う。緊迫した空気はまるで戦場のよう。そして、突風が吹き荒れる。


「え、ちょ!!沖田さんんんんん!!!」


凄まじい量の雪玉が主に沖田さんから放たれる。その殆どは土方さんを狙ったもの。しかし、それをあろうことか刀で斬っている土方さん。斬られた雪玉だったものが私を襲う。これはまるで戦場…じゃない。戦場だ。
向こうでは近藤さんが黙々と雪玉を作っている。攻守ともあちらは最強だ。


「ひ、土方さん!!私のことは構わず…こ、攻撃…こ攻撃を!!」


息も絶え絶えにやっと紡いだ言葉。土方さんは黙々と私に当たるであろう雪玉を粉々にしてくださっている。そのおかげで私への被害は最小限に留まっている。でも、このままでは攻撃が出来ずに負けてしまう。


「死ねー!!!土方!!!」


すると、何を思ったか沖田さんは土方さんではなく私に照準を変える。凄まじい雪玉の数に土方さんもこの寒い中汗を流しながら防いでいる。このままじゃ…!!!


「きゃ!」

「みょうじ!!!」


ぽすん、
ぽすん、


「「あ、」」

「俺と近藤さんの勝ちでさァ」


(土方コノヤロー)
(あ?)
(土方コノヤロー)
(総悟、てめー勝って何機嫌悪くしてんだよ)



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