ゆく年くる年

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年末年始。この時期は真選組屯所内も人も少なく静かであった。家族がいるものは家族サービスするために、上京してきたものは帰省する。隊士達がいないので女中達も各々長期休暇をとっている。


「静かですね。沖田さん」

「……」

「こんな日は炬燵でみかんですね」

「……」

「知ってます?みかんはお尻からよりこのヘタの部分から剥くと綺麗に…ほら」

「あーん」

「もう、炬燵から手出したくないのは一緒なんですからね」


なんとも和やかな雰囲気が流れる自室。この屯所内には局長の近藤さんをはじめ、土方さん、沖田さん、私がいる。なんとも平和なことで有難い。そんな訳で私は折角綺麗に剥けたみかんを沖田さんに奪われているところである。


「みょうじ知ってやすかィ?みかんはこうやって炬燵で温めると甘くなるんでィ」

「えー」

「まぁ、騙されたと思って剥いてみなせェ」

「えっ!結局剥くの私なんですか?!」

「ほれ」


十分に沖田さんによって温められたみかんが私に委ねられる。剥くように。寒いから喋らないと思っていたらずっとみかん温めていたの?人肌に温まったみかんを丁寧に剥いてゆく。ちょっと柔らかくなって剥きにくい。


「あーん、」

「もう!沖田さん甘えすぎですよ、はい」


文句を言いながらもあげてしまう私も私であるが…
沖田さんの口に放り込んだ後、自身の口にも放り込む。


「わ!甘いですね」

「あと、転がして旨くなるとかも言ってやしたぜ」

「……誰がですか?」

「結野アナ」

(このテレビっ子め)
(もうみかん無くなりやした)
(!!!私のみかん!!!)


◇◇◇


「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします」

「おぅ!おめでとさん!ほれ、なまえちゃんお年玉」

「!近藤さん、貰っていいんですか?」

「もちろんだとも!なまえちゃんは俺の可愛い可愛い娘も同然だからな!!あははは!!」


一応働いているけど、可愛がられて嬉しくないわけなく近藤さんにはどうしても甘えてしまう。そんな近藤さんは真選組のお父さんなわけで…


「近藤さん!!!俺そんな歳じゃねーって毎年毎年っ!!!」

「そう言うなトシ」

「そうだー土方ー。俺のお年玉早く下せェ」

「うっせ!!俺はおめーの親じゃねーよ!!」


毎年見る光景。近藤さんが昔からの心の許せる土方さん、沖田さんにお年玉を渡す。もちろん沖田さんは喜んで受け取るが、土方さんはもう立派な大人で受け取るわけにはいかないらしい。
このちょっとした年初めの乱闘を止めるのは毎年私の初仕事になっている。


「近藤さん、土方さん、沖田さん!今年もよろしくお願いします!さ!初詣行きましょ!!!」


(なんで、みょうじの方が5,000多いんでィ!)
(あ!沖田さん何するんですか!)
(妥当な金額だな、)
(死ね!土方ぁぁああああ!!!)

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