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まだ見ぬ君へ

「あのタマゴ、どんなポケモンが孵るんだろうね!」
 今朝オーキド校長がリーリエに託した白いタマゴ。ラナキラマウンテンで発見されたらしいそれは、真っ白な表面にお花の模様が特徴である。触れるとほんのりあたたかく、話しかけると応えるように時おり小さく揺れる様は、中にポケモンが入っていると思わせるには充分だった。
 そろそろサトシが無事に送り届けた頃だろうか、リーリエの家があんまり大きくて驚いてるかもしれないね。あの子のお家はアローラでもそうそう見かけないレベルの豪邸だから。
「なまえはどんなポケモンがいいんだ?」
「あたし? あたしはねえ、やっぱ歌の上手なポケモンがいいかな! たとえばチルットとか!」
「チルットはアローラじゃ見かけないからな……難しいんじゃないか」
「あ、そっか」
 色とか結構いい線いってると思ったんだけどなあ。でも確かにチルットのタマゴならもっと水色でもくもくの模様かもしれないし、くさタイプでもないのにお花の模様はあんりないかな? 偶然お花に見えるのだとしても、ラナキラマウンテンって場所も考えないといけないんだよね。
 うーん、とあたしが頭を悩ませていると、カキが小さく笑った。
「珍しく真面目に考えてるんだな」
「えー? だってさ、みんなで一緒に歌えたら楽しいもん」
 シャイな人たちが多いのかあたしの誘い方が悪いのか、あたしに付き合ってくれる人は実はそれほど多くない。その反面、ポケモンたちは例えばあたしが1人で歌っているときでもどこからか現れて一緒に歌ったり踊ったりしてくれる。水面から跳ねて飛び出してくるコイキング、空から舞い降りるツツケラの群れ、草むらから顔を出すのはコラッタやヤングース。オドリドリがたくさん集まってきたときは時間も忘れて歌っちゃった。野生のポケモンに顔見知りがどんどん増えるのはすごく楽しくて、たまにお気に入りの道具やきのみまで貰えたりするとその日1日幸せに過ごせるんだ。
 だからこそ、あのタマゴから孵るポケモンも歌や踊りを好きになってくれるとあたしは嬉しい。上手い下手は関係なくて、歌いたい、踊りたい、楽しいって気持ちが、それらを好きだと思えることが何より大事なんだもんね。
「仮に苦手だったとしても、お前が居ればすぐ好きになってくれるだろ」
「そうかな? えへへっ、だといいな! そしたらカキも一緒に踊ってね」
「……リーリエが許してくれたらな」
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