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ふたりのみどり

 ――あんな石ころひとつで。
 日曜の夜、暇を見つけたグリーンはタマムシデパートへと足を運んでいた。理由は気分転換が5割、姉から仰せつかった用事が3割、そして残りの2割は、とある少女を思い浮かべてのことだった。
 先日グリーンバッジを明け渡したその少女は、グリーンをグリーンとして見てくれる数少ない人物である。ジムリーダーでも、オーキドの孫でもない、ただひとりのトレーナー。そうしたおのれに憧れられる、種類はどうあれ真っ直ぐな好意を向けられるのはなかなか悪くないものだ。
 そして、そういった心地の良さを感じているからこそ、どうにも気になって仕方ない要素が存在しているともいえる。
 数年前までは普通に店頭に並んでいたくせに、最近はすっかりレア物と化した4種の進化の石――そのなかのひとつ、件の少女を思わせる緑の石を思い浮かべながら、グリーンは小さく舌打ちをした。
 あんな石ころひとつで優劣が決まってしまうなんて、まるで、自分たちの関係に値段がつけられたようではないかと。


20180329
- ナノ -