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「……いいと思う」
 アローラに発つ直前のことだ。ひどく無口なレッドさんが、出し抜けに発したひと言。それは、遠い南国に向けての服装選びに頭を悩ませていたわたしに対して投げかけられたものだった。
「え、えっと、それは――」
 くるりと振り返るわたしに、レッドさんは帽子のツバに触れて微笑む。おのれの帽子とわたしのそれを交互に指し示し、どこかにこやかに頷くのだ。
「あっ――お、おそろい」
 レッドさんはまた頷く。このキャップは絶対外さないようにしよう――そう思った午後3時のことだった。


20180329
- ナノ -