Pokemon

おはよっ!

 ……ずしり。
 体にかかる不自然な重みに、あたしは少しの窮屈さと安心感を覚えて目を覚ます。彼が――ナマエさんが泊まりに来たときはいつもこう。時には背中から、またある時には正面から、あたしは毎度毎度抱き枕にされている。
 ま……まぁ、いわゆるそういう仲な訳だから、そういうことを致すこともあるけれど、それがなくてもナマエさんは、いつもあたしと一緒に寝たがる。一人暮らしが長いからとか抱き枕がないと眠れないとか、それらしい理由をつけて、毎夜あたしを抱きすくめて。最初こそ狭いし肩がこるし暑苦しいしイヤだなあと思っていたけれど、今となってはもう慣れっこ。
 どうして彼がこんな行為に至るのかはわからない。あたしのことをそんなにも好きでいてくれるのか、本当に抱き枕がないと眠れないのか、はたまた人肌が恋しいのか、夜が淋しいのか。ぼんやりと考えてみることは多々あれど、あたしが彼の背負っているものについて知っていることはきっとまだほんの一握りで、こうやって思考を巡らせても答えになんてたどり着けないと思う。
 でもあたしは、それもいいかなとも思うの。ナマエさんが、あたしのそばで少しでも不安や苦しみを感じずに済むのなら。短い付き合いになる訳でもなし、いつか答えや彼の本心に触れることが許されるのなら、抱き枕になるくらい安いもんじゃないかなって。
 ……そんなことを考えるくらい、あたしはこのひとにベタ惚れらしい。最初はあんなに酷かったのに。
 でも……そうね、寝顔の独り占めっていうのも、案外悪いものじゃないかもね。このおっきなねぼすけを起こすのを、毎回楽しみにしてるあたしがいるのも事実だし。

「ナマエさん、起ーきーて。起きないとアメタマ呼んじゃうよー」
「あひぃ!!」

 起こすための必殺技も、身につけてることだしね。


発掘したので持ってきました
20161213

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