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屈折(蛍/タルタリヤ前提)

 私を前にしたミラは、悪意や嫌悪をいっさい隠さずそれらすべてを顔に出す。憎悪にまみれたその目はきっと他の誰にも見せないもので、初めこそ鬱陶しくて仕方なかったはずなのに、いつしか私はその刺激的な目が向けられるのを待ちわびるようになっていた。
 変化がいつ訪れたのかはわからない。ただ、漠然と心地がいい。虐げられて喜んでいるのではなく、私という存在に強い感情を抱くあの子が憐れで仕方ないだけだ。
 あの子は私のことが「嫌い」だと言う。それは私だって同じだし、あの子供じみた振る舞いに愛らしさを感じたことなんてちっともない。タルタリヤがひたすら可愛いと言うのも私には理解できないし、あんなふうにミラを可愛がるなんてことも、私には一生できないと思う。
 ただ時おり、あの憎々しげな瞳が自分から逸れるのを面白くないと感じてしまう私が頭をもたげるのも事実だ。私以外の人間に憎しみを抱くミラなんて、正直想像もできないけれど――
 好意なんて可愛らしいものではないこのおぞましい感情を、私はきっと空にもパイモンにも、もちろんタルタリヤにだって、絶対に打ち明けないだろう。
 この感情も、あの顔も。知っているのは私一人だけでいいのだ。

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