2013/01/01 23:07

夢のなかで啜り泣く彼を、私が慰められる訳もないのです。
何故なら彼は、私のために泣いているのですから。
触れてもいいのでしょう。
愛していると囁いて慰めることも許されるでしょう。
ですが、私の紡ぐ愛など彼にとっては偽りも同然で、おそらく私がうそぶく度に溢れる涙が、また私を困らせることになるのです。
ただの一度だって、彼を嫌うことなどないと言うのに。
私には力も無ければ癒すための言の葉すら持ち合わせていません。
それをどんなに怨んだところで意味は持たず、私を睨めば睨むほど、きっと彼は自分への憎悪だと変換してしまうのでしょう。
だから私はいつだって、当たり障りのない言葉を吐いて、私の立ち位置から一歩も外れぬまま遠く離れた隣から、彼を好いていると笑いかけるのです。
僅かに載せた愛情が、いつか心に刺さることを信じて。
ああ、大人になればなるほど、無茶ができなくなる自分が情けないなあ。



大人祐悠の憂鬱
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